汎熱帯海流散布植物の種分化過程の解明

汎熱帯海流散布植物とは、熱帯・亜熱帯域を中心とする広大な分布域を持つ海流散布植物のことです。代表的な種類として、グンバイヒルガオ(ヒルガオ科)、ナガミハマナタマメ(マメ科)、オオハマボウ(アオイ科)などがいます。いずれも海岸域に生育し、浮遊性・耐塩性のある種子が海流によって運ばれるという特徴を持っています。汎熱帯海流散布植物の種の維持と分化が、どのような遺伝子流動あるいは自然選択のバランスによって成り立っているのかを明らかにするために、全球的な分子系統地理学的解析を展開しています。

汎熱帯海流散布植物オオハマボウの分子系統地理

旧大陸および太平洋・インド洋諸島に広く分布するオオハマボウとその近縁種に注目し、その分化過程や集団間の遺伝子流動のパターンについて解析をおこなっています。全球的な遺伝的構造を明らかにするために、様々な分子生物学的手法を用いて解析をおこなっています。

マングローブ植物Rhizophora mangleの分子系統地理

Rhizophora mangleは新大陸の東西および西アフリカに広く分布するマングローブ植物である。その分布域内には、新大陸、大西洋といった種子散布の妨げのなりうる地理的障壁が存在する。集団間の遺伝的分化のパターンと地理的障壁との関連について調べている。また、南太平洋に分布するRhizophora samoensis(Rhizophora mangleに形態が酷似)の由来についても調べている。卒業研究生の田村さんと協力して解析を進めている。

大洋島固有種の種分化過程の解明

小笠原諸島固有種モンテンボクの由来と分化

小笠原諸島には広域分布するオオハマボウと固有種のモンテンボクが生育しています。形態的類似性からモンテンボクはオオハマボウと類縁であると考えられていますが、同所的に分布する両種が、どのような過程を経て分化したかについてはわかっていませんでした。これまで、葉形態の測定、さく葉標本の観察、分子系統学的解析からモンテンボクの由来と分化過程の解明を試みてきました。