授業ノート

1. Practice of Unix like environment using Cygwin: Cygwinを用いたUnixライク環境の体験

系統解析ソフトウェアのうちMac版PAUP*やMesquiteは大変使いやすいグラフィカルユーザーインターフェースを備えていますが、そうでないものが多くあります。また、ソースコードで配布されるものは、自分の環境に合わせてコンパイルしないと、使用できません。そういうソフトウェアを操作し、自分のコンピュータで使えるようにするには、Unix系のコマンドラインでの操作に慣れておくことが必須です。この講義では、Windows上で走るUnix環境エミュレータであるCygwinを使って、コマンドラインコンピュータの操作を学習します。
Some softwares for phylogenetic analysis are not equipped with GUI like PAUP* of Macintosh or Mesquite. Some softwares also to be compilied under the configuration of each terminal. Here, we try to use Cygwin, an emulater of Unix environment on Windows, to use r8s, PAML, and others.

Installation: Cygwin and Text Editor: 環境の設定:Cygwinとテキストエディタのインストール

この演習では、Windowsのグラフィカルインターフェース’(GUI: 簡単に言うと、”マウスでポインタを動かしクリックしてそうさするもの")の下で動作するソフトウェアと、Unix様のコマンドラインインターフェース(CLI: 簡単に言うと、"キーボードから命令を文字で打ち込むもの")の両方を組み合わせて使用できるように、WindowsXPの環境をセットアップします(MacOSXやLinuxのGUIを使っている人は、こんなことをしなくとも、GUIとCLIの両方を簡単に使うことができます)。インストールするのは、以下のソフトウェアです。

  1. Cygwin: Windows環境で動くUNIXエミュレータ。このソフトウェアをインストールすることで、UNIXのCLIで使われる様々な機能を簡単に体験することができます。
  2. K2Editor: テキストエディタ。UNIXのCLI環境にもviやemacs等のエディタがありますが、Windows利用者には使いやすいと思われるGUIで動くテキストエディタを使います。

Cygwinのインストール: Installation of Cygwin

Unixライク環境の基本操作:

これからCygwinとテキストエディタの他、下でダウンロードする様々なソフトウェアを使ってUnixライク環境を使って系統推定を行います。この授業では、以下の基本操作・知識が必要ですので、必ず慣れておきましょう。なお、Mac OSXユーザの場合、ターミナルを起動するだけでUnixライクの操作を行うことができます。
To use Unix-like environment, you should understand following basics.

  1. Cygwinの起動とウィンドウ設定の変更
  2. コマンドラインインターフェースの使い方
  3. 文字を使っファイルやたディレクトリの表し方とディレクトリの構成
  4. ディレクトリに関する基本コマンド(命令)
    • カレントディレクトリの表示: pwd : show the current directory
    • ディレクトリの内容表示: ls : list the contents of the directory
    • ディレクトリへの移動: cd : change directory
    • ディレクトリ間のファイルコピー: cp ; 移動: mv 別ディレクトリへのファイルの移動・名前の変更
      • cp : copy file, mv : move file
    • 新しいディレクトリの作成: mkdir
    • ファイルの削除: rm
    • コンソールへの文字の表示: echo : display strings in the console
      • 例: ファイルの作成
        echo test > test.txt
        This command will make a file "test.txt" in which a letter "test" is stored.
    • ファイルの内容の表示: cat : display the contents of the text file
    • ファイルの削除: rm :: delete a file
    • ディレクトリの作成: mkdir : make new directory
  1. テキストエディタによるデータファイルの作成と保存と改行コード

Cygwinの起動とウィンドウ設定の変更

先ほどインストールしたcygwinのアイコンがデスクトップにあるはずなので、ダブルクリックして立ち上げてみましょう。そうすると、画面に黒いウィンドウが開き、コマンドプロンプト(カーソルがチカチカ点滅しているところ)が表示されます。Unixライクな操作は、ここに文字で命令を打ち込むことで行います。操作を始める前に、このウィンドウについて、次の設定をしておきましょう。

  1. プロパティの変更: ウィンドウ左上のCを右クリックしてプロパティを選択
    • オプションタブをクリック:
      • バッファサイズを200ぐらいに
      • 簡易編集モードをチェック(これで、マウスの右クリックでテキストのコピー・ペーストが可能)
    • レイアウトタブをクリック
      • 画面サイズを好みの大きさに(今回は幅95, 高さ20にしてみた)
    • ウィンドウを閉じて終了「このウィンドウを起動したショートカットを変更する

初めてのコマンドラインインターフェース: Unix-like CLI

Non-Japanese students: Visit English Tutorials for Unix/Linux of Marine Biological Laboratory .

それでは、コマンドラインインターフェースを使って、コンピュータに命令を与えてみましょう。今、Cygwinの画面には、

$

という文字が表示され、その右側でカーソルがチカチカしているはずです。ここに

pwd

と入力してみましょう。そうすると、

/home/user_name

と表示されたはずです(user_nameの部分は、それぞれWindows設定時に自分が決めたユーザー名.コマンドラインの操作を行う人は、この名前を短くしておく方が、後々の操作が楽になる。名前の変更は、コントロールパネルのユーザーアカウントから行える)。
この pwd というコマンドは、現在自分が操作しているディレクトリの位置を表示してくれる、便利なコマンドです(どのディレクトリを見ているのかわからなくなったら、すぐに pwd と入力しましょう)。
Unixライク環境のコマンドラインインターフェースでの多くの操作は、

・文字で命令を入力
・その命令をコンピュータが実行
・結果を出力: 画面に表示したり、ファイルに書き込んだり

という流れで行われます。今の pwd というコマンドでは、

・pwd という命令を入力
・現在のディレクトリをコンピュータが取得
・結果を画面に表示

という流れで進みました。では、ここで、結果の出力先をファイルに変更してみましょう。次のコマンドを入力してみてください。

pwd > current_d.txt

> という記号は、出力先をファイルにするということを意味しています。
タイピングが面倒な人は、マウスで選択してコピーし、Cygwinのウィンドウで右クリックすればいいです。 そうすると画面には、特に何も結果は表示されません。ではここで、

ls

と入力します。これは、ディレクトリの中のファイルやディレクトリを一覧するコマンドです。そうすると、

current_d.txt

という文字が表示されました。つまり、このディレクトリの中に、current_d.txt というファイルが存在していることを表しています。では、このファイルの中には何が入っているのでしょうか?ここで、lessというコマンドを使います。

less current_d.txt

そうすると、

/home/tkaji

という文字が表示されましたね。lessはファイルの中身を表示させる命令です。q を押すと、終了できます。
以上が、文字入力でコンピュータに命令を与える、Unixライク環境の基本操作です。結果はいつも、画面に表示されるか、ファイルとしてディスクに保存されます。

文字を使っファイルやディレクトリの表し方とディレクトリの構成

では、もう一度 pwd でカレントディレクトリを確認してみましょう。私のコンピュータでは、

/home/tkaji
Untitled1.gif

と表示されていますが、これは、コンピュータのハードディスク上のどの位置にあるのでしょうか?スタートメニューから、マイコンピュータを開いてエクスプローラ(知らない人もいると思いますが、Windowsでファイルの一覧を表示させるソフトの名前です)の、ツールバーの「フォルダ」をクリックして、フォルダーをツリー表示させてみましょう。フォルダが次のような階層構造になっているのがわかります。
Unixライクな操作では、それぞれのフォルダのことを「ディレクトリ」と言います。また、それぞれのディレクトリは名前がついていて、pwd コマンドで表示されたように文字で表すことができます。

cygwin/ルート
 home/homeホーム
  tkaji/home/tkaji/ユーザーホーム
   sample1/home/tkaji/sample1/(解析用サンプルファイルの置き場所)

Windowsのハードディスクの中のフォルダの位置と、Cygwinのファイル構成でのディレクトリの対応を理解しておいてください。この授業でよく使うディレクトリは

/home/tkaji(ユーザーごとに違う名前/
/home/tkaji/sample1(解析ごとに違う名前)/
/usr/local/bin/ (実行形式ファイルの置き場所)

の3つです。では、試しに、sample1というフォルダをエクスプローラーを使って作成してみましょう。フォルダツリーでtkaji(ユーザーごとに違う名前)をクリックし、ファイルメニューから「新規作成/フォルダ」を選択して作った新しいフォルダに sample1 という名前をつけてください。
cygwinで、

ls /home/tkaji(ユーザーごとに違う名前)

と入力すると、

sample1  current_d.txt

という名前が表示されるのがわかります。でも、これでは、sample1がファイルなのかディレクトリなのかはわかりません。そこで、

 ls -l /home/tkaji(ユーザーごとに違う名前)

と入力してみましょう。-l はオプションで、表示の形式を変えるものです。ファイルやディレクトリの名前が縦に表示されており、一番左の文字が d になっているものがディレクトリ、それ以外はファイルを表しています。

-rw-r--r--  1 tkaji なし    12 Jan 20 04:42 current_d.txt
drwxrwxrwx+ 2 tkaji なし     0 Jan 20 05:21 sample1

今行った操作で大事なことは、

Cygwinの操作で解析等に使うファイルはWindowsからマウスのクリック操作で作れる
作ったファイルは、 /home/の下の、自分のディレクトリに入れておく

ということです。後でもう一度説明しますが、Windowsのソフトウェアと、Cygwinを行き来するときに、ディレクトリの場所を意識することがとても大切なので、覚えておいてください。

ディレクトリに関する基本命令

それでは、ディレクトリの基本構成が理解できたところで、基本命令(コマンド)のいくつかを試してみましょう。

2. テキストエディタによるデータファイルの作成と保存と改行コード

Unixライク環境での解析に必要なデータファイルの編集は、viやemacsというエディタをCygwinから使うことも可能ですが、Windowsユーザーにとっては操作がそれほど簡単ではありません。先にインストールした、K2EditorなどのWindowsのテキストエディタを使う方が、ずーっと簡単です。

K2Editor or Notepad ++ のインストール

LF and CR: 改行コードに注意

WindowsとUnixライク環境を行き来する場合、改行コードに注意する必要があります。
改行コードというのはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、文書(テキスト)で改行されている場所には、改行を示す目に見えない文字が入っています。しかも、それは、Windows、Unix、Macintoshの3者で異なっています.

Windows   CR+LF
Unix      LF
Macintosh CR

この違いが、Windows, Unix, Mac間でデータをやりとりする場合、いつも、問題になります。また、コンピュータ間でのデータのやりとりだけでなく、今回のように、WindowsのテキストエディタとUnixライク環境であるCygwinの間のやりとりや、Mac OSとMacのターミナル(Darwin)の間のやりとりでも、注意していなくてはなりません。
では、実際に、K2Editorでファイルを作成して、Cygwinに移動してみましょう。まず、K2Editorを起動して、

 ATGCGGTT
 ATGGCGTT
 ATGGAGTT

をコピーして、ペーストし、Cygwinの自分のデータフォルダに保存してください(私の場合、/home/tkaji/)。K2Editorで保存するときにファイルが表示されたら、ハードディスク c:の下のCygwinフォルダの中の、homeフォルダの中の自分のフォルダに、

test1.txt

という名前で保存します。
このとき、ファイル名を入力する欄の下の方に、

現在の文字コードと改行コードと保存

とかかれていますので、右側の▼をクリックして、

文字コードと改行コードを指定して保存

にしてください。そうすると次の画面で、「保存時の文字コードと改行の選択」ウィンドウが開くので、

文字コード SJIS (変更する必要は無いです)
改行コード  LF  (Unixライク環境で使う場合は、必ず LF にする)

を選んで保存します。

Unixライク環境で使う場合、改行コードは必ず LF にする

を忘れないでください。

今後の操作でも、このようにK2Editorを使ってデータファイルを編集し、Cygwinのデータディレクトリに保存するという操作を繰り返します。

3. Compile source code under Cygwin: 解析用プログラムのインストール

Unixライク環境では、使用するコンピュータを選ばずにソフトウェアをインストールすることができるのですが、そのかわり、その環境に合った実行形式のプログラムファイルを作成するために、コンパイルという作業が必要になります。簡単に流れを説明すると、

・ソースコードをダウンロード(通常、tar等で1つのファイルにまとめられている)
  - obtain the source code (mostly, archived by ''tar'')
・Windowsのeoやlha、Cygwinの中ならtarを使ってアーカイブを展開
  - open (extract) files under cygwin environment using ''tar''
・ソースコードのフォルダに移動し、make を使ってコンパイル
  - move to the folder where source codes are stored, then compile them using ''make''
・できた実行形式ファイル(Windowsでは.exeという拡張子がついている)を
   /usr/local/bin/ 等のパスの通ったディレクトリに移動しておく
  - move the executable file to ''/usr/local/bin/''

解析用プログラムのインストール: RaxMLの場合

Using MrBayes and Mr Modeltest under : Cygwin環境でMrBayesとMrModeltestを使う

Other useful softerwares under cygwin environment

20 Jan. 2011 Review: Cmpiling MrBayes under Cygwin: 復習 Cygwin環境下でのMrBayesのコンパイル

4. Bayes analysis using partitioned data: 異なる領域のデータ連結と、ベイズ法による解析

今回の演習では、ダウンロードしたファイルをもとに自分でサンプルファイルを作って、-MrBayesで簡単な解析ができるところまでを解説しておきます。また、受講生から質問のあった、異なる遺伝子領域のデータを連結して、領域ごとに別のモデルを採用する方法を簡単に紹介します。
You will have a good lecture on Bayesian analysis in Dr. Miya's class in February. To get familiar with the procedure to perform Bayesian analysis, and to answer to a question from a student of the class, I am presenting an example using three genetic regions.

解析用データファイルの準備 : Preparation of data file

3つの異なる領域の配列データを用いた研究として、以下の論文で発表されたデータを使う。GenBankからデータをダウンロードして、全てをコピー・ペーストしても良いのだが、面倒と間違いを避けるために、次のような方法をとる。
For an example data, prepare nucleotide data of three different regions from GenBank. There three genetic data should be connected for each sample (species). To connect nucleotide sequences, copy-and-paste can be an option, but it will be more time consuming and invite errors. Here you have an easier way.

データのダウンロード、アラインメント、ギャップ削除: Data download, alignment, degap

3つのアラインメントファイルの連結: Connect aligned FASTA files

モデルの選択とベイズ法による解析: Choose model by Mrmodeltest, and perform Bayesian analysis

Cygwinを用いたUnixライク環境の体験の説明に従って、MrModeltestとMrBayesを、Cygwinの/usr/local/binディレクトリに入れておく。
Before starting, store executable files of MrModeltest and MrBayes in /usr/local/bin of Cygwin directory. See the explanations in the page linked above.

rbcL, rps16, ITSのそれぞれの領域に対して、モデルの選択を行う: Choose model for each genetic region

MrBayes用にNEXSUS形式ファイルを編集し、パーティション別のモデルを選択: Setting up partitions

Test Run: RaxML

$ raxmlHPC -s allseq-1.phy -n allseq-1.out -m GTRGAMMA -o s_55Myrmic,s_56Myrmic,s_67Pogono