*汎熱帯海流散布植物の種分化過程の解明 [#mbd63c63]
~汎熱帯海流散布植物とは、熱帯・亜熱帯域を中心とする広大な分布域を持つ海流散布植物のことです。代表的な種類として、グンバイヒルガオ(ヒルガオ科)、ナガミハマナタマメ(マメ科)、オオハマボウ(アオイ科)などがいます。いずれも海岸域に生育し、浮遊性・耐塩性のある種子が海流によって運ばれるという特徴を持っています。汎熱帯海流散布植物の種の維持と分化が、どのような遺伝子流動あるいは自然選択のバランスによって成り立っているのかを明らかにするために、全球的な分子系統地理学的解析を展開しています。
*生物多様性と種分化機構の解明 [#x3641265]
生物多様性の創出と維持機構の解明は、生物学の最も重要な課題のひとつです。私は大洋島固有種や汎熱帯海流散布植物に注目して、野外調査と遺伝子解析により、その種分化過程に関する研究をおこなっています。

**汎熱帯海流散布植物オオハマボウの分子系統地理 [#m204df2a]
旧大陸および太平洋・インド洋諸島に広く分布するオオハマボウとその近縁種に注目し、その分化過程や集団間の遺伝子流動のパターンについて解析をおこなっています。全球的な遺伝的構造を明らかにするために、様々な分子生物学的手法を用いて解析をおこなっています。
**大洋島固有植物の種分化研究 [#q8720efa]
大洋島は世界の中でそこの島だけにしか見られない固有生物が数多くいることから“進化の実験場”とも呼ばれています。主に小笠原諸島、鬱陵島、ロビンソンクルーソー諸島の植物に注目して、その種分化過程を明らかにするための研究をおこなっています。
***小笠原諸島固有種ハイビスカス属モンテンボクの起源と分化 [#o6e84763]
***小笠原諸島南硫黄島の植物相調査 [#f4996b1d]
***鬱陵島のカエデ属2種の遺伝的多様性と種分化 [#b37cc293]
***適応放散による種分化と、適応放散によらない種分化の遺伝的背景の比較 [#vebbd45d]

-Koji TAKAYAMA, Tadashi KAJITA, Jin MURATA, Yoichi TATEISHI~
Isolation and characterization of microsatellites in the sea hibiscus ('''Hibiscus tiliaceus''' L., Malvaceae) and related hibiscus species~
'''Molecular Ecology Notes''', ''6'', 721-723, 2006.~
--解説:FIASCO法と呼ばれる濃縮法によって、オオハマボウを対象に12遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを開発した。同時に、9つのマーカーについては、近縁4種の一部あるいは全てで利用可能である可能性が示めされた。(博士課程の研究の一部)

**汎熱帯海流散布植物の系統地理 [#p75071a7]
~汎熱帯海流散布植物とは、熱帯・亜熱帯域を中心とする広大な分布域を持つ海流散布植物のことです。代表的な種類として、グンバイヒルガオ(ヒルガオ科)、ナガミハマナタマメ(マメ科)、オオハマボウ(アオイ科)などがいます。いずれも海岸域に生育し、浮遊性・耐塩性のある種子が海流によって運ばれるという特徴を持っています。汎熱帯海流散布植物の分布の維持と種分化が、どのような遺伝子流動あるいは自然選択のバランスによって成り立っているのかを明らかにするために、全球的な分子系統地理学的解析を展開しています。
***汎熱帯海流散布植物オオハマボウの系統地理 [#g8a3efa7]
***汎熱帯海流散布植物の分類群横断的比較 [#ie6a324f]
***マングローブの全球的遺伝構造 [#qace589a]

-Koji TAKAYAMA, Tadashi KAJITA, Jin MURATA, Yoichi TATEISHI~
Phylogeography and genetic structure of '''Hibiscus tiliaceus''' speciation of a pantropical plant with sea-drifted seeds~
'''Molecular Ecology''', ''15'', 2871-2881, 2006.
--解説:オオハマボウと近縁4種について、葉緑体遺伝子を用いた分子系統学的・集団遺伝学的解析をおこなった。近縁4種はオオハマボウを母種として分化してきた可能性が高いこと、太平洋・インド洋地域では種子による頻繁な遺伝子流動がおこなわれている可能性が高いこと、新大陸に分布するアメリカハマボウとオオハマボウとの間で大規模な遺伝子浸透が起こった可能性が示唆された。(博士課程の研究の一部)
**マイクロサテライトマーカーの開発 [#p75071a7]
生物集団の遺伝的多様性を調べるためにマイクロサテライトマーカーの開発をおこなっています。FIASCO法([[Zane et al. 2002:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1046/j.0962-1083.2001.01418.x/abstract]])、Compound Microsatellite法([[Lian et al. 2006:http://www.springerlink.com/content/d4565155h8vng117/]]) 、454 pyrosequencing法(参考[[Takayama et al. 2011:http://www.ingentaconnect.com/content/iapt/tax/pre-prints/11914;jsessionid=2blcv4f53k9q5.alexandra]])を用いて、マイクロサテライトマーカーを開発し、集団遺伝学的解析に利用しています。

**マングローブ植物Rhizophora mangleの分子系統地理 [#m204df2a]
Rhizophora mangleは新大陸の東西および西アフリカに広く分布するマングローブ植物である。その分布域内には、新大陸、大西洋といった種子散布の妨げのなりうる地理的障壁が存在する。集団間の遺伝的分化のパターンと地理的障壁との関連について調べている。また、南太平洋に分布するRhizophora samoensis(Rhizophora mangleに形態が酷似)の由来についても調べている。卒業研究生の田村さんと協力して解析を進めている。

*大洋島固有種の種分化過程の解明 [#z6e92f77]
**小笠原諸島固有種モンテンボクの由来と分化 [#w7f18534]
小笠原諸島には広域分布するオオハマボウと固有種のモンテンボクが生育しています。形態的類似性からモンテンボクはオオハマボウと類縁であると考えられていますが、同所的に分布する両種が、どのような過程を経て分化したかについてはわかっていませんでした。これまで、葉形態の測定、さく葉標本の観察、分子系統学的解析からモンテンボクの由来と分化過程の解明を試みてきました。

-Koji TAKAYAMA and Hidetoshi KATO~
Morphological variation of leaf characters in '''Hibiscus''' in the Bonin (Ogasawara) Islands~
'''OGASAWARA RESEARCH''', ''26'', 1-13, 2001.
--解説:モンテンボクとオオハマボウの葉の9つの量的形質を測定し、統計的手法を用いて比較した。両種は用いた9つ全ての形質について有意に異なることが示された。また、父島列島と母島列島に生育するモンテンボク集団は、葉裏の星状毛の密度が顕著に異なることが明らかとなった。(卒業研究)

-Koji TAKAYAMA, Tetsuo OHI, Hidetoshi KATO, Hiroshi KUDOH and Michio WAKABAYASHI~
Capsule morphology and geographical distribution of '''Hibiscus glaber''' and '''H. tiliaceus''' ~
'''OGASAWARA RESEARCH''', ''27'', 31-55, 2002.
--標本調査によって、モンテンボクとオオハマボウはさく果の偽隔壁の有無によっても区別されることが示唆された。(修士課程の研究の一部)

-Koji TAKAYAMA, Tetsuo OHI, Hidetoshi KATO, Hiroshi KUDOH~
Origin and diversification of '''Hibiscus glaber''' an endemic species to the oceanic Bonin Islands, revealed by chloroplast DNA polymorphism~
'''Molecular Ecology''', ''14'', 1059-1071, 2005.
--葉緑体遺伝子の約7500塩基対にもとづいて、分子系統学的解析をおこなった。その結果、オオハマボウの複数の系統が小笠原諸島に侵入していることが示された。しかし、モンテンボクは小笠原諸島に分布するオオハマボウ以外の系統と最も近縁である可能性が示唆された。つまり、過去に小笠原諸島に侵入したオオハマボウの系統からモンテンボクが分化し、その後オオハマボウが複数回小笠原諸島に侵入することで、現在見られる同所的な分布が成立したと考えられる。モンテンボクの種子は海水に浮かないことから、海流散布能力の喪失が母集団との遺伝的分化の引き金になったと推測した。(修士課程の研究の一部)