最初の授業で行うアンケート調査で、この授業で学びたいことの上位に毎年来るのが、Wordを使ってレポートを書く方法というものだ。今回の授業では、Wordを使って、レポート等の文書を作成する方法を学ぶ。
前回初めて触れた正規表現の後方参照。難しかった、分からなかったという意見もけっこう多かった。そこで、もうすこし練習して、使い方に慣れてみよう。まずは、前回できなかった演習問題から。
なお、前回課題1で、こんな意見を貰った。
テキストデータで整形するよりも、Excelとの合わせ技のほうが早いものもあるので、 無理やりテキストファイルばかりを扱うのはどうかと思います。
とても良いコメントだと思う。全くその通りで、テキストエディタと正規表現を使う方法が、いつも1番速く、楽な方法という訳ではない。エクセルの様々な関数や機能の使い方が分かっている人は、そういう方法を使えば良い。以前に説明したことの繰り返しになるが、
方法は1つでは無い
ただ、授業でテキストエディタと正規表現に重点を置いて講義する理由は、次の2つ。
というわけで、もう少し、まずは後方参照を使った正規表現検索・置換の演習をやってみよう。まずは慣れること、そして、理解することを心がけよう。
下に友達の誕生日リストが月、日、年の順で書かれている。
April 29, 1984 March 20, 1987 September 23, 1980 December 23, 1982 February 11, 1984 January 1, 1999 May 3, 1988 May 4, 1993 May 5, 1987 November 23, 1985 November 3, 1994
April 29, 1984を見ると
月: 行頭から始まって、半角英文字だけがいくつか連続した文字列 日: 空白の次にくる半角数字の連続で次にカンマがくるような文字列 年: 空白の次にくる半角数字の連続で最後が行末それぞれを正規表現で表すと、
月: ^[A-Za-z]+ 日: [0-9]+, (注:正規表現前に空白が1つある) 年: [0-9]+$ (注:正規表現前に空白が1つある)そうすると、これらを左からならべた
^[A-Za-z]+ [0-9]+, [0-9]+$が
April 29, 1984にマッチするはずだ。
後方参照というのは、()で正規表現を囲むことにより、 その正規表現にマッチした文字列を、置換語として再利用できるものだったまず、上のそれぞれのパーツの正規表現を、カンマや空白の部分を除いて()で囲ってみると、
^([A-Za-z]+) ([0-9]+), ([0-9]+)$になる(ここは、()で囲むだけだから単純なことだ。この()で囲んだそれぞれの正規表現がマッチした文字列を、左から順番に
¥1 ¥2 ¥3という記号で、置換文字列に呼び出すことができる。つまり、1行目ではそれぞれ、次のように対応している。
¥1 → April ¥2 → 29 ¥3 → 1984そのため、もし、置換文字列に
¥3 ¥2 ¥1と書いたばあい、これは1行目では、
1984 29 Aprilを表すし、2行目では、
1987 20 March 20を表すことになる。
検索文字列:([A-Za-z]+) ([0-9]+), ([0-9]+) 置換文字列:¥3 ¥2 ¥1 あるいは 検索文字列:^([^ ]+) ([^ ]+), ([^ ]+)$ 置換文字列:¥3 ¥2 ¥1
moodleページにアクセスして、課題を表示させて解説。
なお、正規表現の例をもっと知りたければ、H20年度の学生の要望で作った、授業/H20/情報処理/正規表現熟語帳を参照してみよう。
やりたいこと | 検索文字列 | 対象文字列の例 | 置換文字列 | 置換された結果例 | コメント |
1行に含まれる全ての文字列を置換 | ^.*$ | abcdefg hijklmn 12345 opqrstu vwzya 98765 | Replaced! | Replaced! Replaced! | |
連続する半角スペースをタブに置換 | [ ]+ | abc def hij k | ¥t | abc<tab>def<tab>hij<tab>k | |
AまたはKをZに置換 | [AK] | BACK BaKery KABA | Z | BZCZ BaZery ZZBZ | |
AまたはKとそれに続く任意の1文字をZに | [AK]. | BACK BaKery KABA | Z | BZZBaZry ZBA | |
スペース以外の文字列の連続をtangoに置き換え | [^ ]+ | I am a boy. You are a girl. | tango | tango tango tango tango tango tango tango tango | |
1行を行頭からスペースで4つのパートに区切り、順序を逆に並べ替え | ^([^ ]+) ([^ ]+) ([^ ]+) (.*)$ | 12 34 56 78 90 Que sera, sera. Whatever will be. | ¥4 ¥3 ¥2 ¥1 | 78 90 56 34 12 Whatever will be. sera. sera, Que |
表にあげた以外の正規表現で同じ操作を行うこともできる
検索文字列の最初においた場合は行頭から始まることを示す ^[A-Z].* で、行頭がアルファベット大文字で始まる任意の文字列 文字集合を表す[ ]の中で最初に置かれた場合、それに続く文字以外を表す [^a-z]+ で、英小文字以外の任意の文字からなる文字列 参考:$は検索文字列の最後に置かれた場合、行末であることを示す [a-z]+$ で、行末に続く英小文字の連続を示す
みなさんは、これまでに、いろんな授業で何度もレポートを提出しているはず。ところが、「何度レポートを出しても良い評価をもらったことが無い」という人が時々いる。そういう人は、もしかするとレポートのどういう点が評価されるのか、わかっていないのかも知れない。生物学科では3年になると毎週のように実験があり、2週間に1度は実験レポートを書かなければいけないのに、レポートの書き方をわかっていないようでは困ってしまう。
そこでまず、レポートの書き方について簡単にまとめたスライドを見て貰おう。これは、5年前に私が担当したコア授業で、1年生向けに使ったスライドだが、レポート一般に関する注意点は、今でもあまり変わっていない。
ポイント: あなたのメッセージを分かりやすく相手に伝えるために、Wordを使ってできる限りのことをしよう
上で述べたようなレポートについての諸注意は、各自でよく考えて、十分にトレーニングする必要がある。申し訳無いけれど、この授業でこれといった即効性のあるテクニックを教えられるわけではない。でも、ワードを使って可能な限り読みやすいレポートを作り、採点者による減点を減らす努力はできるだろう。採点者は、たくさんのレポートに目を通さなければならない。そんなとき、読みにくいレポート(例えば、判読しがたい字で書き殴ったようなレポート)があると、減点をしたくなるのは当然だろう。
では、レポート作成のサンプルファイルとして、report_example.docxをダウンロードしよう。
要旨(摘要) 本論 結論 引用文献とか
要旨 序論 材料と方法 結果 考察 引用文献とか、最初に構成を決めておくと書きやすくなる
いろんな証拠を使って、自分の意見ややったことを相手に納得させること!
野外実習のレポートを提出。観察した植物の学名リストと、注目した植物の観察結果は必ず提出すること。
植物分類野外実習レポート 07s4099 東浪見花子 2007年5月31日
はじめに 目次 1.実習場所と実施日 2.観察植物リスト ・リストの作成方法 ・作成したリスト 3.注目した植物の観察結果 1. 2. おわりに 参考文献
Wordはさまざまな機能を持っている。上ではレポート作成に必要なごく一部の機能だけを紹介したが、さらに、卒業論文の作成などで便利な機能もいくつか紹介しておこう。
レポート等の文書を作成する場合、読みやすさを求めるには、フォントの種類や大きさを変えたり、行間を整えたり、いろんな手間が必要になる。しかし、こういった作業を何度も繰り返してやるのは面倒。そこで、自分専用テンプレート(ひな形)を1つ作っておく。そうすれば、今後のレポート作成のときには、ひな形に合わせて内容を書き換えるだけで、見栄えのいいレポートができることになる。
右のリンクから、レポート作成のためのテンプレートをmoodleページにアップロードしておいたので参考にして欲しい(ダウンロード)。
このファイルを開くと、レポートで使われる様々な書式設定の見本と解説が載っているのが分かる。説明を読みながら、自分用に内容を変更すれば、自分だけのためのレポート用のテンプレートが作成できることになる。
授業では全てを解説している時間は無いので、いくつかの項目を抜き出して解説する。残りは自分で読んで、いろいろと変更して、機能を体験して欲しい。
Wordの文書では、要素ごとにスタイルが設定することができる。この場合、基本のスタイルを変更すれば、そのスタイルが適用されている部分の書式を一度に変更できる。
作成する文書が長くなってくると、目次をつける必要がある。目次は、見出しのところに「見出し」スタイルが適用されていると、自動的に作成することができる。
Wordを使えるようになったからといって、良いレポートが書けるわけではない
伝えたいメッセージ(主張)が無ければ、良いレポートなんて書けやしない
下の本は、レポートを書くということについて、具体的に分かりやすくまとめられている。
戸田山 和久. 論文の教室—レポートから卒論まで. 297ページ. 出版社: 日本放送出版協会 (2002/11)
(あと、今日Google検索をして見つけたんですが、テクニカルライター・冨永敦子さんの「プロから学ぶ「分かりやすい文章の書き方」講座」も参考になりそうです。)
キャリア授業について寺崎先生から聞いたところによると、今年の1年生には、将来、研究者になることを子房している人が多いということだった。そこで、研究者を目指す学生が、修士2年の春に直面する、「学振DC2」申請を紹介しておこう。