Wordを使ったレポート作成:

第5回授業の獲得目標: [worried]

発展的な正規表現:後方参照への挑戦 [smile]

前回は基本的な正規表現の使い方をマスターした。今日は1つ上のレベルの正規表現「後方参照」にチャレンジしてみよう。K2Editorのヘルプで後方参照に関する項目を見てみると、次のように書かれている。

後方参照
正規表現の中で()を使ってグループ化された部分にマッチ文字列は、 \1,\2などの表現で、
再度正規表現の中に埋め込むことが可能です。 
\の後ろに続く数字は、何番目のグルーピングされた文字列かを示します。 
たとえば、(\w+)[ ]+\1 は "ABC ABC"や"ppp ppp"に対してマッチしますが、 
"ABC ppp"にはマッチしません。 
\の後ろに続く数字には制限はありません。ただし、1〜9までは常に後方参照と解されますが、
 \10以降は、その後方参照に対応するグループがない場合は、8進数のコントロール文字と
解されますので注意が必要です。 
また、本当に一桁の8進数のコントロール文字を書く場合には、 \001などという風に書きましょう。 
(K2Editorのヘルプファイルから後方参照の部分を抜粋)

ちょっと分かりにくいかも知れないが、半角の

()

の中で指定したパターンにマッチした文字列を、

¥1

などという記号を使うことで、呼び出すことができるということだ。
まず簡単な例で操作をしてみよう

テキストデータ: A9JA49K6  に対して、
1. Aの次の1文字と、Kの次の1文字をすべて削除したい。
2. Aの次の1文字と、そのAの並び順を入れ替えたい。

というような問題があったとする。
K2Editorで実際に試してみると:

テキストデータ  A9JA49K6
・AかKの次の1文字を削除
  検索文字列 ([AK]).
  置換文字列 ¥1
・Aに続く1文字とAの順序入れ替え
  検索文字列 (A)(.)
  置換文字列 ¥2¥1

書籍リストを出版年順に並び替える

では、もう少し具体的な例をつかって、段階的に説明してみよう。
まず、次のような書籍のリストがある。このリストを、K2Editorで開いてみよう。file書籍リスト.txt

まずは、これまでに習った正規表現で、どこまで解決できるか考えてみる

このリストには、出版年が含まれているにも関わらず、出版年の順番に並んでない。どうすれば、出版年で並び替えられるだろうか?
リストをよく見てみると

タイトル・著者,出版年,ページ・価格

という順番で並んでいる。ここで、

出版年だけを切り出して、
出版年 <タブ> タイトル・著者,出版年,ページ・価格

というリストを作り、エクセルにペーストして

出版年タイトル・著者,出版年,ページ・価格

という表を作り、出版年で並び替えれば良いということまでは、想像できるだろう。
では、出版年だけを切り出すにはどうすればいいだろうか? まず、これまでにならった正規表現で表現できるところだけを書いてみると、

練習:日付データの形式変更

下に友達の誕生日リストが月、日、年の順で書かれている。

April 29, 1984
March 20, 1987
September 23, 1980	
December 23, 1982
February 11, 1984
January 1, 1999
May 3, 1988
May 4, 1993
May 5, 1987
November 23, 1985
November 3, 1994

発展演習: DNAの塩基配列データの整形処理

添付されているファイルfilesequence_Pdic.fastaには、Pedicularisという植物のDNA塩基配列データがFASTA形式で入っている。GenBankからダウンロードしたままの形式なので、

>gi|310769146|gb|HM596759.1| Pedicularis procera tRNA-Leu (trnL) gene
 (GenBankID, データベース、Accession No.、種名、遺伝子の種類...)

が、それぞれのデータを示すラベル情報として入っている。これを、よりシンプルに、

>種名の省略形_Accession No.
という形に整形したい。上の例だと、
>P_procera_HM596759

に置換したい。どのようにすれば良いか、考えてみよう。
この操作は、実際にDNAデータベースのデータを使って、系統解析を行うときに、知っていると大変役に立つ。

「Wordのいろんな機能が覚えられない」という不安を持つ人は、「調べればできる」を目指そう

前回授業のWordの機能に関するアンケート結果
#5_1.jpg
これを見てみると、多くの人が、「今はできないけど、調べればできる」を回答してくれていた。これはとても頼もしい結果で、この授業で目指しているのは、まさに、「今は出来なくても、調べれば分かる」という自信をつけて貰うことだ。

毎年、この情報授業でWord、Excel, Power Pointの解説をすると、多くの学生が、

「機能がたくさんありすぎて、やり方を覚えられない」

という悩みを持つ。でも、大丈夫。

機能の全てを覚える必要は無い

これらのソフトをほぼ毎日使っている私も、機能を全部理解してないし、覚えていない。必要なのは、

「こんなことができる」というのを知っておくこと
そうすれば、必要なときに、やり方を調べて対処できる

今日やる、目次の作成や、ページ番号、図形の作成にしても、ネットで方法を検索すると、初心者向け解説がたくさん見つかる。 そうやって作業しているうちに、こういうソフトの操作に慣れるので、あまり心配しないように。

あえて太字で繰り返すが、
この授業で習ったことの全てを今すぐ自分でできなくってもかまわない
「授業で習ったようやれば、こんなことができるはずだ」
「こういうことはコンピュータにやらせれば簡単にできるはずなので調べてみよう」
そういう理解を持って貰うだけでも十分です。授業中の演習がこなせていれば、良しとしましょう。

Wordを使ったレポート作成

ポイント: あなたのメッセージを分かりやすく相手に伝えるために、Wordを使ってできる限りのことをしよう

第2回の授業で述べたようなレポートについての諸注意は、各自でよく考えて、十分にトレーニングする必要がある。申し訳無いけれど、この授業でこれといった即効性のあるテクニックは教えられない。でも、ワードを使って可能な限り読みやすいレポートを作り、採点者による減点を減らす努力はできるだろう。採点者は、たくさんのレポートに目を通さなければならない。そんなとき、読みにくいレポート(例えば、判読しがたい字で書き殴ったようなレポート)があると、減点をしたくなるのは当然だろう。

では、前回授業でmoodleページからダウンロードしたレポート作成用テンプレートを使って、架空のレポートを1つ作ってみよう。

演習:ダウンロードしたレポート作成用テンプレートを使って、架空のレポートを作る

  1. 図の作成は「挿入」タブから図形ツールで
    • □や○などの基本図形や矢印、吹き出しなども自由に作成できる
    • いろんな図を利用できる → Power Pointの作業と共通する部分が多いので、次週解説。

Wordを使った文書作成に習熟する [smile]

Wordはさまざまな機能を持っている。上ではレポート作成に必要なごく一部の機能だけを紹介したが、さらに、卒業論文の作成などで便利な機能もいくつか紹介しておこう。

テンプレートを用いたレポート作成

レポート等の文書を作成する場合、読みやすさを求めるには、フォントの種類や大きさを変えたり、行間を整えたり、いろんな手間が必要になる。しかし、こういった作業を何度も繰り返してやるのは面倒。そこで、自分専用テンプレート(ひな形)を1つ作っておく。そうすれば、今後のレポート作成のときには、ひな形に合わせて内容を書き換えるだけで、見栄えのいいレポートができることになる。
右のリンクから、レポート作成のためのテンプレートをmoodleページにアップロードしておいたので参考にして欲しい(ダウンロード)。
このファイルを開くと、レポートで使われる様々な書式設定の見本と解説が載っているのが分かる。説明を読みながら、自分用に内容を変更すれば、自分だけのためのレポート用のテンプレートが作成できることになる。
授業では全てを解説している時間は無いので、いくつかの項目を抜き出して解説する。残りは自分で読んで、いろいろと変更して、機能を体験して欲しい。

スタイルの変更:

Wordの文書では、要素ごとにスタイルが設定することができる。この場合、基本のスタイルを変更すれば、そのスタイルが適用されている部分の書式を一度に変更できる。

Word以前の問題: レポートにはメッセージが不可欠

Wordを使えるようになったからといって、良いレポートが書けるわけではない
伝えたいメッセージ(主張)が無ければ、良いレポートなんて書けやしない

下の本は、レポートを書くということについて、具体的に分かりやすくまとめられている。

CV098.jpg

研究者を目指す人のための長期計画

今年の1年生にも、将来、研究者になることを志望している人が多い。そこで、研究者を目指す学生が、修士2年の春に直面する、「学振DC」申請を紹介しておこう。。
日本学術振興会特別研究員ホームページ:http://www.jsps.go.jp/j-pd/index.html
日本学術振興会特別研究員DC(略して「学振DC」)というのは、研究者の養成・確保を目的として、我が国トップクラスの優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与える制度。もし学振DCに選ばれると、

博士課程の3年間、月額200,000円の研究奨励金と、年間150万円以内の研究費が支給される

という、非常に有り難い制度。平成23年度の生物学分野の場合、申請者数367(DC1)に対して、84人(22.9%)が採用されていまる。しかも、博士1年からの採用(DC1という)への申請者は、それほど発表論文の本数(業績と言う)が多くないので、申請書のできが、審査に大きく影響する。

申請書のリンクを下にはっておいたので、ダウンロードして見てみよう。
特別研究員DC:申請用の様式(Word):http://www.jsps.go.jp/j-pd/data/shinsei/02_dc.doc


かなりの内容を分かりやすく、MS Wordを用いて書かなければならない。生物分野では無いが、実際にDC1に採用された人の申請書がネット上に公開されているので、見てみよう。
http://www.mibel.cs.tsukuba.ac.jp/~ceekz/dc1/dc1.pdf
  (申請者本人のウェブページ:http://www.mibel.cs.tsukuba.ac.jp/~ceekz/dc1/

こういう申請書を作成するときには、自分のアイデアを論理的に、分かりやすく説明できることが不可欠だ。そして、そういう能力(論理的説明能力や、文章作成能力)というのは、一朝一夕には身につかない。研究者を目指す皆さんは、今からちょうど5年後のM2の春には学振申請が待っていることを目標に定めて、今から、論理的説明能力や文章作成能力を磨いておくといいだろう。申請書の作成には、この授業で習う図の貼り付けや模式図の作成方法も必要だ。

また、学振特別研究員を狙うなら、論文(雑誌に発表された論文)はある方が有利だろう。moodleのページに実際の投稿論文で使われたWordファイル(新村さんの論文)を添付しておいたので、見てみよう。このファイルでは、投稿先の論文が指定するスタイルが使われている。
「論理的説明」ということに関しては、最近読んだ本:「論理的に説明する技術 説得力をアップする効果的なトレーニング法とは (サイエンス・アイ新書) 」は説明が分かりやすく書かれているし、イラストも多用されている。そもそも「論理的説明ってどういうこと?」というところから知りたい人にはお勧めだろう。
その他、学振申請や、論理的説明能力についてさらに知りたい人は、私やキャリア担当の教員に尋ねてください。