コンテンツ
授業は、教員と学生のコミュニケーションで成立するものです。しかし、そこには様々な「面倒」が存在します
授業にはこういう「面倒」はつきものです。また、面倒を顧みず実施したところで、学生と期待通りのコミュニケーションを行えるとは限りません。そこで、ウェブサーバを活用することで、こういう面倒を軽減させ、しかも、コミュニケーションのスピードも高められるというのが今日のお話しです。また、表題では「ウェブサーバ」だけを挙げていますが、授業運営の方法としては他に、電子メールとデータベース、及び周辺技術も含めてお話しします。
以下、ウェブサーバ(及び電子メールやデータベース)を利用した授業運営の長所と短所をまとめておきます。
以上が、今日の話しのポイントです。ウェブサーバの導入や運営は慣れるまで面倒な部分がありますが、うまく利用できれば、学生とのコミュニケーションをもっと頻繁にとることができ、授業の効果が高まると思います。
今日のお話しは上に挙げたコンテンツの構成で行います。
恐らく多くの方は、ウェブサーバを自分自身で立ち上げたことは無いと思います。
今、皆さんに見ていいるページが、Pukiwikiというシステムを使って作成したウェブページです。Pukiwikiというのは、一言で言うと、ウェブブラウザから自由に書き換えが行える、ウェブページの管理システムです。
皆さんもよくご存じのウィキペディア Wikipedia もPukiwikiと同じ様な「ウィキ」のシステムによって作られています。
Pukiwikiについての詳しい解説は、(→「Pukiwikiについて」)を見てください。
このページで解説されている内容を簡単にまとめると、
■Pukiwikiの特徴■ ウェブページの編集がWebブラウザから自由にとても簡単に行える 訪問者が自由にページの内容を自由に変更することができる(注:変更できなくすることも可能) HTMLを覚えなくとも文字修飾が簡単にできる。図版の貼り付けも簡単
また、授業でPukiwikiを利用することの利点には、次のようなことが挙げられます:
■授業でPukiwikiを使う利点■ 分かりやすく見やすいページを短時間で作成できる 出来上がったウェブページは印刷して配付資料として、あるいはそのままスクリーンに投影して解説できる 学生は必要に応じていつでも授業内容を参照できる パスワード認証付きページも簡単に作れるので、一般公開に向かないデータも利用できる
授業用に新しいページを作るには、次のような操作を行います。手順をここに挙げておきますが、後で練習用ページ:2007年12月29日までは利用可能)にアクセスして、ぜひ、試してみてください。Pukiwiki には様々な機能がありますが、基本は以下の通りです。
■授業用にページ新しいページを作る手順■ ・ページ内の「新規」をクリックして、新しいページを作成 ・ページ名を入力 ・授業で提供したい情報を入力 ・行頭におくアスタリスクの数( * or ** or ***)で、見出しのレベルを3段階に調節 ・編集画面での改行は、ウェブページ上に反映されない。改行の後に ~ を入力するか、行頭に ~ を入力 ・箇条書きのリストを作りたいときは、 行頭に - ( or -- or --- )を入力 ・URLを入力すると自動的にリンクがはられる ・[[リンクをはりたい文字列>http://url...]] と入力するだけで、簡単にリンクをはれる ・同じプキウィキ内のページ名を記入すると自動的にリンクがはられる(注:初期設定のままならば) ・ファイルをアップロードすると、ページの最下部にリンクがはられ、ダウンロードできるようになる &ref(./ファイル名); を文章中に入力すると、その場所にファイルへのリンクがはられる。画像の場合は、画像が表示される
■授業用の情報提供
例:授業/H19/情報処理/04 「テキストファイルの加工とエクセルの使い方」
この例は、普遍教育の「情報処理」の授業ページです。この講義では、学生に実際にコンピュータを操作させることで、コンピュータの使い方を学ばせます。正面のスクリーンにはこのページの画面を投影し、必要箇所をポインタで示しながら、解説を行います。学生は解説されたのと同じことを自分のコンピュータ上で行うのですが、実際の作業をする際にはスクリーンを見る必要は無く、自分のコンピュータのディスプレイに授業ページを表示させ、そこに書かれた手順で作業すれば、自分のペースで作業を行うことができます。
情報処理」の授業は技術を教えることがメインなので、手順を図版や文書でまとめ、Pukiwikiページに貼り付けるだけです。上のページの作成にかかった時間は、当日の朝から授業直前までですから、6, 7時間でした。その場限りでは無い、効果的な授業ページ1コマ分が、たったの6時間でできるので、かなり効率が良いと思っています。
■学生の個人ページ(認証制限付き)の作成
例:情報処理の学生用ページ(注:制限ページのため一般からはアクセスできません)
この例では、学生一人一人にPukiwikiのページを持たせ、レポートの提出はこのページから行わせました。また、そのレポートに対するコメントを、同じページ内に書き込みました。以下、学生用ページの利点を箇条書きにします。
- 掲示板の作成が簡単にできる
- 例:プロジェクト決定まで(※非公開ページにつき、リンクをはずしました)
- 例:プロジェクト平均顔Now(※非公開ページにつき、リンクをはずしました)
- 参考:授業/H18/情報処理/14:上のプロジェクトの結果
- 学生:個人ページでレポートの提出が簡単にできる; 教員:コメントが簡単に返せる
(個人ページはパスワード認証つきです)
- 個人ページの例
- 学生からのコメント例
- レポート(図版)提出例
- 定型アンケートを作っておけば、書き込む方もコピペで楽。テキストの一括処理で、集計も楽
- 授業課題の例
項目を定型化したアンケートは、簡単なテキスト処理(検索・置換)を行うことで、集計することがる。授業の最後には学生自身にアンケートのデータに修得した情報しょり技術のおさらいとして、データを集計させた。
- 学生によるアンケート集計
- 教員によるアンケート集計
- 研究室においては、研究の進め方の相談、論文作成の過程を共著者で共有することなど、様々に活用できる。
Pukiwikiはとても素晴らしいシステムだが、インターネットに接続できるコンピュータが必要。「情報処理」の授業では、学生にPukiwikiでレポート提出させられるが、その他の授業でパソコン利用を強要することはできない。そこで、携帯電話のメール機能を使って、レポートを提出できるようにした。こうすれば、通学途中の電車の中でレポートを作成して、送ってくれる。
電子メールでレポートを提出させる場合、課題の内容を工夫しておく必要がある。
■メール提出用課題の注意点■ ・本文中に氏名と学籍番号を明記すること ・図版を使わずに答えられるような設問が望ましい ・携帯電話メールやフリーメールからの提出も受け付ける ・アンケートをレポートの一部として位置づけておけば、必ず意見が貰える ・メールでのレポート提出についてガイダンスを行い、良い例と悪い例を見せておく ・学生はメールによるレポート提出を歓迎してはいるが、届いたかどうか分からないことに不安を感じる → Pukiwikiを活用して、提出者の学籍番号リストが認証制限つきページで見られるようにしておく
内容:課題の答えとそれが選ばれた理由、また、他の選択肢が選ばれなかった理由を簡単にまとめる。 フリーメール、携帯電話メールどれからでも提出可
レポートの提出例:良い例と悪い例
レポートの提出例(良い例) 例えば、先ほどの系統樹で「カエルがヒトとサカナのどちらにより近縁か」という問題がレポート1として出されたら、 メール件名: レポート1 メール内容: ヒトに近い。理由は、カエルとヒトの最も今に近い共通祖先は、 カエルとサカナの最も今に近い共通祖先の子孫であるから。 千葉ちはな(06S4442) "○ このレポートは、どのように考えたかが、分かりやすく説明されている。 満点" レポートの提出例(悪い例) メール件名: レポート1 メール内容: 答えはヒト。理由は、特にありません。 千葉ちはな(06S4442) "× このレポートには、どのように考えたかが 説明されていない。 1点"
■特徴、便利さ、デモ
上で紹介したレンタルサーバはデータベース機能を持っている。ウェブ上におかれたデータベースに、毎回のレポート採点結果をおいておけば、学生は自分の得点と学習の進め方を自分で確認することができる。イメージとしては、成績の入ったエクセルのワークシートをインターネット上に置いておき、学生は自分のデータだけを閲覧できるというもの。
ただし、サーバを介してのデータベース利用はより専門的な知識を要するので、今回は導入方法についての解説は行わない。以下の活用事例と、参考文献・参考URLの紹介のみを行う。
■活用事例: 学生個人の専用ページで、レポートへのコメントと成績を返却■ <例> レポート10 【回答】 答えは b)理由:7番の分類群は、その姉妹群である8番よりも前の時代から化石が得ら れていることに注目すると、8番の方が7番のよりも後の時代から化石が得られるので、8番の種の系統 が現れたのは、最低で、7番の化石が得られている250万年前であると考えられる。よって答えは b)である。 【評点】 5 【コメント】 授業では、問題文の「what is the minimum age we could infer for lineage 8?」を 「8番の種の系統が現れたのは、最低で、...<中略>8番の出現年代は、最も遡れば、7番の化石が得ら れた2.5MAまで遡れる可能性があると考えられる」が適当です。 レポート11 【回答】 - 【評点】 42 【コメント】 試験 順位データ 現在の順位:7位(63人中) 総得点:86 得点分布 平均点:70.44 得点 人数 93 1 92 2 90 1 87 2 86 3 85 2 84 3 82 1 81 5 80 2 78 3 77 1 76 1 75 1 74 1 73 3 72 2
■テキストエディタの利用、データの一括整形
上の例では、メールで提出されたレポートにコメントをつけ、返却した。1つ1つのメールを返信するのは面倒なので、一括してデータベースに取り込み、ウェブサーバを介して返却した。その手順は以下の通りで、テキストエディタで一括置換することにより、短時間でデータの整形を行っている。
以下、やや専門用語も含まれていますが、手順
1. Eudoraなどのメーラーソフトで、届いたレポートメールを複数選択し、一括してテキスト保存 2. テキストエディタで保存されたメールを開き、ヘッダのうち不要部分を一括削除(正規表現検索・置換) 3. 正規表現検索・置換を繰り返し、レポート回数、氏名、学籍番号、レポート本文にタブでカラムを区切る 4. File Maker Pro等のデータベースソフトに取り込んで、レポートに対してコメントと評点を追加 5. 全てのカラムをタブ区切りのテキスト形式でセーブし、サーバに作成したデータベース(PostgreSQL)にアップロード 6. 学生がパスワード認証により自分のレポートの採点結果を閲覧できるように、PHPでスクリプト作成
(※最後の2行は、データベースサーバとか、CGIとかの知識が必要なので、あまり一般的な話しでは有りません。でも、はじめの4つは、今年度の「情報処理」で1年生に習得させた作業です)