Wordを使った文書作成

最初の授業で行うアンケート調査で、この授業で学びたいことの上位に毎年来るのが、Wordを使ってレポートを書く方法というものだ。今回の授業では、Wordを使って、レポート等の文書を作成する方法を学ぶ。

第7回授業の獲得目標: [worried]

正規表現熟語集:後方参照に慣れる [smile]

前回初めて触れた正規表現の後方参照。難しかった、分からなかったという意見もけっこう多かった。そこで、もうすこし練習して、使い方に慣れてみよう。まずは、前回できなかった演習問題から。
なお、前回課題1で、こんな意見を貰った。

テキストデータで整形するよりも、Excelとの合わせ技のほうが早いものもあるので、
無理やりテキストファイルばかりを扱うのはどうかと思います。

とても良いコメントだと思う。全くその通りで、テキストエディタと正規表現を使う方法が、いつも1番速く、楽な方法という訳ではない。エクセルの様々な関数や機能の使い方が分かっている人は、そういう方法を使えば良い。以前に説明したことの繰り返しになるが、
方法は1つでは無い
ただ、授業でテキストエディタと正規表現に重点を置いて講義する理由は、次の2つ。

というわけで、もう少し、まずは後方参照を使った正規表現検索・置換の演習をやってみよう。まずは慣れること、そして、理解することを心がけよう。覚えることを目的にするのでは無く、こんな事ができるんだとか、こんな面白い方法があるんだとか、楽しんで貰えると、嬉しいです。

練習:日付データの形式変更

下に友達の誕生日リストが月、日、年の順で書かれている。

April 29, 1984
March 20, 1987
September 23, 1980
December 23, 1982
February 11, 1984
January 1, 1999
May 3, 1988
May 4, 1993
May 5, 1987
November 23, 1985
November 3, 1994

解説

前回の課題3の解説



なお、正規表現の例をもっと知りたければ、H20年度の学生の要望で作った、授業/H20/情報処理/正規表現熟語帳を参照してみよう。

やりたいこと検索文字列対象文字列の例置換文字列置換された結果例コメント
1行に含まれる全ての文字列を置換^.*$abcdefg hijklmn 12345
opqrstu vwzya 98765
Replaced!Replaced!
Replaced!
連続する半角スペースをタブに置換[ ]+abc def hij k¥tabc<tab>def<tab>hij<tab>k
AまたはKをZに置換[AK]BACK BaKery KABAZBZCZ BaZery ZZBZ
AまたはKとそれに続く任意の1文字をZに[AK].BACK BaKery KABAZBZZBaZry ZBA
スペース以外の文字列の連続をtangoに置き換え[^ ]+I am a boy. You are a girl.tangotango tango tango tango tango tango tango tango
1行を行頭からスペースで4つのパートに区切り、順序を逆に並べ替え^([^ ]+) ([^ ]+) ([^ ]+) (.*)$12 34 56 78 90
Que sera, sera. Whatever will be.
¥4 ¥3 ¥2 ¥178 90 56 34 12
Whatever will be. sera. sera, Que

表にあげた以外の正規表現で同じ操作を行うこともできる

レポートってどういうもの? [smile]

みなさんは、これまでに、いろんな授業で何度もレポートを提出しているはず。ところが、「何度レポートを出しても良い評価をもらったことが無い」という人が時々いる。そういう人は、もしかするとレポートのどういう点が評価されるのか、わかっていないのかも知れない。生物学科では3年になると毎週のように実験があり、2週間に1度は実験レポートを書かなければいけないのに、レポートの書き方をわかっていないようでは困ってしまう。
そこでまず、レポートの書き方について簡単にまとめたスライドを見て貰おう。これは、5年前に私が担当したコア授業で、1年生向けに使ったスライドだが、レポート一般に関する注意点は、今でもあまり変わっていない。

Slide0001.gif #06_rep2.gif #06_rep3.gif Slide0004.gif Slide0005.gif Slide0006.gif Slide0007.gif Slide0008.gif Slide0012.gif

Wordを使ってできる「読みやすい」レポート

ポイント: あなたのメッセージを分かりやすく相手に伝えるために、Wordを使ってできる限りのことをしよう

上で述べたようなレポートについての諸注意は、各自でよく考えて、十分にトレーニングする必要がある。申し訳無いけれど、この授業でこれといった即効性のあるテクニックは教えられない。でも、ワードを使って可能な限り読みやすいレポートを作り、採点者による減点を減らす努力はできるだろう。採点者は、たくさんのレポートに目を通さなければならない。そんなとき、読みにくいレポート(例えば、判読しがたい字で書き殴ったようなレポート)があると、減点をしたくなるのは当然だろう。

では、レポート作成のサンプルファイルとして、filereport_example.docxをダウンロードしよう。

演習:filereport_example.docxを真似たレポートを作ってみよう

  1. 図の作成は「挿入」タブから図形ツールで
    • □や○などの基本図形や矢印、吹き出しなども自由に作成できる
    • いろんな図を利用できる → Power Pointの作業と共通する部分が多いので、次週解説。

Wordを使った文書作成に習熟する [smile]

Wordはさまざまな機能を持っている。上ではレポート作成に必要なごく一部の機能だけを紹介したが、さらに、卒業論文の作成などで便利な機能もいくつか紹介しておこう。

テンプレートを用いたレポート作成

レポート等の文書を作成する場合、読みやすさを求めるには、フォントの種類や大きさを変えたり、行間を整えたり、いろんな手間が必要になる。しかし、こういった作業を何度も繰り返してやるのは面倒。そこで、自分専用テンプレート(ひな形)を1つ作っておく。そうすれば、今後のレポート作成のときには、ひな形に合わせて内容を書き換えるだけで、見栄えのいいレポートができることになる。
右のリンクから、レポート作成のためのテンプレートをmoodleページにアップロードしておいたので参考にして欲しい(ダウンロード)。
このファイルを開くと、レポートで使われる様々な書式設定の見本と解説が載っているのが分かる。説明を読みながら、自分用に内容を変更すれば、自分だけのためのレポート用のテンプレートが作成できることになる。
授業では全てを解説している時間は無いので、いくつかの項目を抜き出して解説する。残りは自分で読んで、いろいろと変更して、機能を体験して欲しい。

スタイルの変更:

Wordの文書では、要素ごとにスタイルが設定することができる。この場合、基本のスタイルを変更すれば、そのスタイルが適用されている部分の書式を一度に変更できる。

Word以前の問題: レポートにはメッセージが不可欠

Wordを使えるようになったからといって、良いレポートが書けるわけではない
伝えたいメッセージ(主張)が無ければ、良いレポートなんて書けやしない

下の本は、レポートを書くということについて、具体的に分かりやすくまとめられている。

CV098.jpg

戸田山 和久. 論文の教室—レポートから卒論まで. 297ページ. 出版社: 日本放送出版協会 (2002/11)

(あと、今日Google検索をして見つけたんですが、テクニカルライター・冨永敦子さんの「プロから学ぶ「分かりやすい文章の書き方」講座」も参考になりそうです。)

自分の考えを文章で表現することは研究者にも必要

キャリア授業について寺崎先生から聞いたところによると、今年の1年生には、将来、研究者になることを子房している人が多いということだった。そこで、研究者を目指す学生が、修士2年の春に直面する、「学振DC」申請を紹介しておこう。
日本学術振興会特別研究員ホームページ:http://www.jsps.go.jp/j-pd/index.html
日本学術振興会特別研究員DC(略して「学振DC」)というのは、研究者の養成・確保を目的として、我が国トップクラスの優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与える制度。もし学振DCに選ばれると、
博士課程の3年間、月額200,000円の研究奨励金と、年間150万円以内の研究費が支給される
という、非常に有り難い制度です。平成23年度の生物学分野の場合、申請者数367(DC1)に対して、84人(22.9%)が採用されています。しかも、博士1年からの採用(DC1という)への申請者は、それほど発表論文の本数(業績と言います)が多くないので、申請書のできが、審査に大きく影響します。
申請書のリンクを下にはっておいたので、ダウンロードして見てみよう。
特別研究員DC:申請用の様式(Word):http://www.jsps.go.jp/j-pd/data/shinsei/02_dc.doc

かなりの内容を分かりやすく書かなければならない。生物分野では無いが、実際にDC1に採用された人の申請書がネット上に公開されているので、見てみよう。
http://www.mibel.cs.tsukuba.ac.jp/~ceekz/dc1/dc1.pdf
  (申請者本人のウェブページ:http://www.mibel.cs.tsukuba.ac.jp/~ceekz/dc1/
こういう申請書を作成するときには、自分のアイデアを論理的に、分かりやすく説明できることが不可欠だ。そして、そういう能力(論理的説明能力や、文章作成能力)というのは、一朝一夕には身につかない。研究者を目指す皆さんは、今からちょうど5年後のM2の春には学振申請が待っていることを目標に定めて、今から、論理的説明能力や文章作成能力を磨いておくといいだろう。

学振申請や、論理的説明能力についてさらに知りたい人は、私やキャリア担当の教員に尋ねてください。

第7回授業の課題