*インターネットを介した情報伝達:DNAデータベース の利用法 [#obf31b70]


生物学の研究において、インターネットを利用したDNAデータベースへのアクセスは、必要不可欠な作業だろう。この授業では、インターネットを介してDNAデータベースシステムにアクセスし、実際に塩基配列データをダウンロードする方法を学ぶ。また、ダウンロードしたデータを用いて系統解析に挑戦する。

//さらに、こうした情報が、インターネットを介してどのように伝達されているかを知る。また、実際にウェブページを作成する基本を学び、自作したウェブページをインターネットに公開する。

#contents

**第12回授業の獲得目標:&worried; [#o16ead14]
-''1. データベースとはどういうものかを理解する''
-''2. DNAデータベースにアクセスし、キーワードやアクセッション番号で配列データを検索する方法を習得する''
--GenBankの利用に挑戦する
-''3. 塩基配列を用いてデータベースを検索し、よく似た配列データを得る方法(BLASTサーチ)を習得する''
-''4. ダウンロードしたDNAの塩基配列データをアラインメント(整列)し、系統樹作成等の解析に用いる方法に挑戦する''


**第11回授業:発展課題の解説 [#jc728f1e]
解答例

 drift= function(num_repeats,num_generations,size_population, num_a_allele){
 	 results=c()
         a=num_a_allele
 	 for(i in 1:num_repeats){
 		  for(j in 1:num_generations){
 		      count_a=0
 		       for(k in 1:size_population){
 			    if ( runif(1) < a/size_population ){
 			     count_a=count_a+1
 			    }
 		       }
 		       a=count_a
 		       results=append(results, a/size_population)
 		  }
 		  a=num_a_allele
 	 }
 	 rmatrix=matrix(results, nrow=num_generations, ncol=num_repeats)
 	 return(matplot(rmatrix, type="l", ylim=c(0,1)))
 }
 

この関数を使って、今年度前期試験に出た[[問題>http://hiw.oo.kawai-juku.ac.jp/nyushi/honshi/08/ch1.html]]の条件で、シミュレーションをやってみよう。
 集団:1万人(遺伝子の集団サイズ20000)、Hbsの遺伝子頻度、約0.1 世代数 100
 地球上からマラリアが撲滅され、鎌状赤血球貧血症で死ぬことも無くなった場合
~
上の関数に与える数値はそれぞれ次のような意味を持っていることに注意しておこう
 drift(実験回数,観察世代数,集団サイズ,対立遺伝子数の初期値)
&ref(授業/H20/情報処理/12/#12_03.jpg,80%);~
 #問2-1   drift(10, 500, 200, 100)
 #問2-2    drift(10, 100, 20, 10)
 #前期試験   drift(3, 100, 20000, 2000)  #計算には時間がかかる
&ref(./#12_1.jpg);

**データベースとは何か?&smile; [#q8a589ca]
 データベースとは、様々な目的のために整理されたデータの集まりのことを指すこともあるし、
 大量のデータとそれを保存したり管理したりする方式まで含めてデータベースと言うこともある。
いずれの意味においても、データベースというのが、大量のデータを扱うものであることに違いは無い。~
データベースという言葉を聞いたことの無い皆さんも、実は、日常的にデータベースを利用している。例えば、
 GoogleやYahooのキーワード検索
 Amazonや楽天の商品検索
などは、いずれもデータベースを利用したサービスだ。~

今回と次回の2回の授業では、生物学科の学生なら必ずお世話になるデータベースの利用方法と、さらにもう一歩踏み込んで、データベースを自分で作る方法を学ぶ。~

**DNAデータベースの利用:様々な検索とダウンロード&smile; [#o6fb631d]
今日の授業では、まず、
 インターネットを介してデータベースにアクセス
 情報を取得
 自分の実験・解析に用いる
方法を修得する。用いるのは、生物学の研究において最も頻繁に利用されるデータベースである''DNAデータベース''だ。~
インターネットの向こう側にあるサーバというコンピュータにデータベースが構築されており、インターネットを介して要求を送ることで、様々なデータを得ることができる。
~今回は、DNAデータベースから実際にデータをダウンロードして、自分のコンピュータ上で加工し、系統樹を作成することに挑戦する。

***3大DNAデータベース [#q42bcc66]
現在、DNAデータベースには3つの大きなデータベースが存在する。
-DDBJ  http://www.ddbj.nig.ac.jp/Welcome-j.html
--日本のDNAデータベース。EMBLやGenBankとの関係、データ登録の方法、現在保有しているデータ件数とデータ増加率などの解説もある。その他、データダウンロードの方法や、解析方法、解析ツールの紹介、などが日本語で書かれている。さらには、自分で作ったプログラムでDDBJのデータベースを直接操作する方法まで、情報は盛りだくさん。
-EMBL  http://www.ebi.ac.uk/  ヨーロッパのDNAデータベース
-GenBank   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/  アメリカ合衆国のDNAデータベース

日本で運営されているDDBJはEMBL, GenBankと共に3大DNAデータバンクと呼ばれ、三者で「国際塩基配列データベース」を構築している。DDBJで登録されたデータには、EMBL, GenBankと共通の''アクセッション番号''が与えられる。個々のデータには、どのデータベースからでもアクセス可能だ。
~
DDBJは日本語で書かれているので、英語が苦手な人にはわかりやすいが、インターフェースは、GenBankの方が使いやすい。そこで、この授業は
 GenBank を用いる
  説明は英語で書かれているため、取っつきにくいかもしれない
しかし、皆さんが自分の研究にDNAデータベースを利用するときには、使いやすさの面から、きっとGenBankを使うだろう。
 授業では日本語で詳しい解説をしながらGenBankを利用するので、
  英語システムの利用に、前向きに挑戦してみよう
 
***塩基配列データの総数 [#w79cb36a]
ところで、これから検索しようとするデータベースに、塩基配列は何件保存されているだろうか?
 質問: DNAデータベースに保存されている塩基配列の件数(エントリー数とか登録数ともいう)は?
   a)  100万件  b)  1,000万件  c)  1億件  d)  10億件

-データベースの登録は、''新規に塩基配列データを決定した登録者''が、オンラインサービスや専用のソフトウェアを使って行うことができる。登録後、公開に必要なデータ項目について審査がある(注:データベースとして必要な項目が入力されているかどうかだけが審査され、実験データの質(正しいとか間違っているとか)が審査される訳では無い)。公開は、データ登録者が公開予定日を指定できるが、論文等が公開されたら自動的に公開される。
-2009年6月現在の登録件数は、DDBJのトップページの左側にある「[[統計の詳細>http://www.ddbj.nig.ac.jp/breakdown_stats/relinfo-j.html]]」をクリックすると見ることができる。データ増加の推移を示した[[グラフ>http://www.ddbj.nig.ac.jp/images/breakdown_stats/DBGrowth-e.gif]]もある。

***キーワードを用いたDNAデータベースの検索: GenBankの利用 &smile; [#sfa6e1c9]
それでは、いよいよGenBankを使って、登録されている塩基配列情報を何か検索してみまよう。まず
~GenBank   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ にアクセスする(右クリックして新しいタブで開く)
~ 画面の上部に"Search"(意味:「検索」)という文字の横の検索対象を"Nucleotide"(意味:「塩基配列」)にして、画面の上の方にあるテキスト入力フィールドに下のキーワードを入力してみよう。準備ができたら"Go"をクリックしよう。
 H1N1 Flu 
>&ref(./#12_2.jpg);~

そうするとわりとすぐに下のようなウィンドウとそれぞれの情報へのリンクが表示される。~
この画面表示のことを、Summary(サマリー: 要約情報)と言う。この画面を見れば、どういう遺伝子が見つかったのかが、おおよそ分かる。
>&ref(./#12_3.gif,60%);
Found 13524023 nucleotide sequences
 
ページ左上には検索件数が表示され、データの1件1件は''アクセッション番号''にリンクがついて、リスト表示されている。''アクセッション番号''という名前は覚えておく方がよい。この番号は、配列につけられた固有の番号で(3大データベースで共通)、配列を研究論文で発表するときには、アクセッション番号を明記することが必須になっている。~

それでは、青い文字で下線のついたリンクをクリックしてみよう。画面が変わって、登録内容が表示される。いろんな項目のことをアノテーションと呼び、登録されたデータがどの生物から得られたものかとか、遺伝子の構成、実験の条件などいろんな情報が含まれている。~
なお、登録データは全て英語英語で書かれているので、日本のDDBJで検索しても、得られる情報は同じだ。~
上の例で検索したとき、一番上に表示された[[GQ334361 >http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/242346917?ordinalpos=1&itool=EntrezSystem2.PEntrez.Sequence.Sequence_ResultsPanel.Sequence_RVDocSum]]というアクセッション番号へのリンクをクリックしてみると、下と同じような形式でデータが表示される(下のデータは例としてあげた、別の生物のもの)。

 LOCUS       AB242157                 367 bp    DNA     linear   PLN 16-MAY-2006
 DEFINITION  Hibiscus tiliaceus DNA, microsatellite, clone:Ht-63.
 ACCESSION   AB242157
 VERSION     AB242157.1  GI:96775746
 KEYWORDS    .
 SOURCE      Hibiscus tiliaceus
   ORGANISM  Hibiscus tiliaceus
             Eukaryota; Viridiplantae; Streptophyta; Embryophyta; Tracheophyta;
             Spermatophyta; Magnoliophyta; eudicotyledons; core eudicotyledons;
             rosids; eurosids II; Malvales; Malvaceae; Malvoideae; Hibiscus.
 REFERENCE   1
   AUTHORS   Takayama,K., Kajita,T., Murata,J. and Tateishi,Y.
   TITLE     Isolation and characterization of microsatellites in the Sea
             hibiscus (Hibiscus tiliaceus, Malvaceae) and related hibiscus
             species
   JOURNAL   Unpublished
 REFERENCE   2  (bases 1 to 367)
   AUTHORS   Takayama,K., Kajita,T., Murata,J. and Tateishi,Y.
   TITLE     Direct Submission
   JOURNAL   Submitted (14-NOV-2005) Koji Takayama, Botanical Gardens, Graduate
             School of Science, The University of Tokyo; Hakusan 3-7-1,
             Bunkyo-ku, Tokyo 112-0001, Japan
             (E-mail:takayama@bg.s.u-tokyo.ac.jp, Tel:81-3814-2625,
             Fax:81-3814-0139)
 FEATURES             Location/Qualifiers
      source          1..367
                      /organism="Hibiscus tiliaceus"
                      /mol_type="genomic DNA"
                      /db_xref="taxon:183267"
                      /clone="Ht-63"
                      /tissue_type="leaf"
      repeat_region   1..367
                      /note="microsatellite"
                      /rpt_type=tandem
 ORIGIN      
         1 taacccaaac cgccagtcca gtcttttcag cccaataccc aacacacaca ctcaacccgg
        61 ctctctctct ctctatctct ctctctctca gcccactcac cctaacatag cccattcttc
       121 ctttacccaa tacacacata actcactcat atacacacac acaacaaagc caacacacac
       181 tctcaccctc cttcacagcc cgcaccacat actcactaac acaacccaca catatccggc
       241 ctattcatac ataccaacct actcattctc acataaccca ctctcctcac aacacacaca
       301 cacacacctc tcttactcaa cccatactct ctctcggccc agacctcacc tacttggccc
       361 actctta
 //

なお、表示されたデータは全て、&size(14){''テキスト情報''};であることに注意しよう。
 この講義の大きな目的:テキストファイル(テキスト情報)の扱いに習熟する
だったことを覚えているだろうか?~
DNAデータがテキスト情報で有る限り、これまで練習してきた、K2Editorなどのテキストエディタを使って編集できるということだ。また、正規表現置換・検索を行えば、自分の好きな形に加工できるということ。

さて、これで、キーワードを用いたDNAデータベースの検索は、一通りできた。あとは、Googleで検索をするときのように、キーワードを加えて絞り込むなどして、欲しい情報をデータベースから探す。
 演習: なんでもいいから、自分の好きなキーワードを入れて、DNAデータベースを検索してみよう
     生物の名前に限らず、人の名前でも何でも良い


***塩基配列データを用いたデータベース検索:BLAST &smile; [#n5ec659f]
さきほどは、
 キーワード を用いて DNAの塩基配列 を 検索
したが、逆に、
 塩基配列 を用いて 登録されている似たようなデータを 検索
するにはどうすればいいだろうか?~
遺伝子の研究を行うとき、働きは分からないけれど、塩基配列だけは決定でたというような場合がよくある。そんなとき使うのが、
''BLAST'だ。では、
[[BLASTN>http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PROGRAM=blastn&BLAST_PROGRAMS=megaBlast&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on&LINK_LOC=blasthome]]をクリックして、塩基配列データを使って登録情報を検索するBLASTNの検索画面を表示させててみよう。

(GenBankのトップページからリンクを辿って、BLASTのページに入り、"Nucleotide-nucleotide BLAST (blastn)"をクリックすることでも入れる)~
対象とする生物が、ヒトやマウスで無い場合、真ん中あたりの「Choose Search Set」で、''Others(nr etc):''をクリックしておこう。~
&ref(./#12_4.gif,60%);~
 ctctacaagt attgtaattt taagagtctt tttactccaa agaaatcccc tttttttttg
それでは、検索ウィンドウに上の60ベースの塩基配列を入れ、&ref(授業/H19/情報処理/12/blastButtonOver.jpg);というボタンをクリックしてみよう。他にもいろいろとオプションの設定はあるが、無視してかまわない。

BLAST!をクリックすると次の画面が表示されるが、検索にはしばらく時間がかかる。画面には経過時間が表示される。
検索が終わると、検索が表示される。画面の上の方には、結果がグラフィックで表示され、、画面の下の方には、説明がテキストで書かれている。
~&ref(./#12_5.gif,60%);~
この画面では、先ほど入力した配列をデータベースサーチして、よく似た配列ほど、上から順に高いスコアで表示される。実は、上の60塩基の配列は、Dipterocarpus kerrii というフタバガキ科の植物からとってきたものだが、検索結果の最初の3つは、全く同一スコアで、その中の一つはDipterocarpus kerii。この検索の結果、先ほどの配列は、Dipterocarpusの葉緑体DNAにあるmatKという遺伝子の配列に含まれているものに非常に近いということが分かる。

実験で得られた遺伝子の塩基配列から、似た遺伝子を探して働きを推測するときに、BLASTサーチは非常に有効だ。

 演習: 50塩基ぐらいの配列を自分で考えて作って、BLASTサーチしてみよう。高スコアで何かの遺伝子と一致するか?

**DNAデータの解析:ClustalXを用いたアラインメントと系統樹作成 &smile; [#j9d58b53]
 先に行ったキーワード検索では、表示されたサマリーから遺伝子の情報を表示させただった。でも、生物学の研究では、複数の塩基配列情報を、1つのファイルにまとめて保存したいことがよくある。~
 例えば、皆さんの卒業研究では、次のような場面でDNAデータベースからデータをダウンロードすることになるかもしれない。
-生理学の研究室に入って、ある生物のミオシンXI遺伝子を研究したら、これまでに分かっている他の生物のミオシンXI遺伝子との関係を知るために、系統樹を作ることが必要になる。DNAの塩基配列を相互に比較できるようにうまく整列して(アラインメントという)、構造の比較もしなくちゃならない。
-遺伝子関係の研究室に行って、機能の分からない未知の転写因子を研究することになった。塩基配列決定後は、BLAST検索を行うなどして、似た配列を持つ複数の遺伝子のデータをアラインメントして示す
-系統の研究室に入ってマツの系統関係を調べることになったら、これまでに分かっているデータをDNAデータバンクからダウンロードして、自分の持っているデータとあわせて系統樹を作成する
-生態の研究室に入ってアマモの集団動態をマイクロサテライトマーカーを使って解析することになったら、DNAデータバンクから、既存のマイクロサテライト配列をダウンロードして、利用する。
~etc...
~研究テーマにもよるが、生物学のほとんどの研究分野でDNAデータベースからのデータを取得する場面が出てくる。

***アクセッション番号を用いた塩基配列データの一括ダウンロード &smile; [#za9da087]
それでは、複数の配列データを一括してダウンロードするにはどうすればいいだろうか?~
先ほどはキーワードで検索を行ったが、今度は''アクセッション番号''で検索してみよう。実際に研究を行うときには、ある論文で発表されている塩基配列をDNAデータバンクから得ようとする場面が多いので、そんなときは、アクセッション番号を使ってダウンロードするのが便利だ。

例えば、下の囲みの中には、[[ヒト、ゴリラ、チンパンジーのミトコンドリアDNAの全配列を研究した論文>http://www.nature.com/nature/journal/v408/n6813/full/408708a0.html]]([[日本語要約>http://www.nature.com/nature/journal/v408/n6813/abs/408708a0.html]]、[[系統樹>http://www.nature.com/nature/journal/v408/n6813/fig_tab/408708a0_F2.html]])から、日本人、フランス人、アフリカ人(Lisongo)、チンパンジー、ゴリラのアクセッション番号が挙げられている。
 AF346989,AF346981,AF346994,D38113,D38114
GenBankやDDBJのgentryというシステムで検索するときは、アクセッション番号をコンマで区切って検索欄に入力すると、対応する配列だけが表示される。では、上の囲みの中の文字列をコピーして、GenBankの検索欄にペーストし、Nucleotideを検索してみよう。
 Searchのプルダウンメニューで、Nucleotide(「塩基」)を選ぶのを忘れないように

5つの遺伝子のサマリーが表示されただろうか?  え?日本人とか、フランス人とかいう情報がサマリーに表示されていないって?... そのとおり。サマリー情報には私たちが使いたい情報が載っているとは限らないので、アクセッション番号がどの遺伝子に対応しているかは、それぞれの詳細情報を見ないと分からない場合がある(それでは不便なので、アクセッション番号と、自分の使いたい情報の対応表を作りたいところだが、これまで学習してきた正規表現検索・置換を使えば、簡単に対応表をつくることができる。時間があったら解説する)。

***FASTA形式による一括ダウンロード [#j6c1f6d6]
さて、自分の指定したアクセッション番号を持つ5つの配列が画面に表示された。次はこれを一括ダウンロードしよう。~
次の手順で操作:

+先ほどのプルダウンメニューの左の方にある、''Summary''と書かれたプルダウンメニューをクリックする。いろんな形式の名前が一覧表示されるが、''FASTA''形式を選ぶ。~
&ref(授業/H18/情報処理/12/12-3.gif);
+画面表示が変わったら、その段の右端の"Send to"と書かれてるプルダウンメニューで''File''を選ぶ。~
(注:画面にFASTA形式の塩基配列が表示されてしまう場合は、ブラウザでサマリー画面に戻って、上の順番で操作を行ってください)~
&ref(授業/H18/情報処理/12/12-2.gif);

私が今使っているシステムでは、 sequences.fasta という名前で配列情報が保存された。これをテキストエディタ(K2Editorなど)で開いてみると、
 >gi|13272920|gb|AF346989.1| Homo sapiens mitochondrion, complete genome
 GATCACAGGTCTATCACCCTATTAACCACTCACGGGAGCTCTCCATGCATTTGGTATTTTCGTCTGGGGG
 GTGTGCACGCGATAGCATTGCGAGACGCTGGAGCCGGAGCACCCTATGTCGCAGTATCTGTCTTTGATTC
 .......................
塩基配列情報が入っていた。

なお、保存されたファイルをK2Editorで開いたとき、下のように塩基配列じゃなくてサマリーがテキストファイルとして保存されている人がいたかもしれない。
 1:  AF346989
 Homo sapiens mitochondrion, complete genome
 gi|13272920|gb|AF346989.1|[13272920]
 
 2:  AF346981
 Homo sapiens mitochondrion, complete genome
 gi|13272808|gb|AF346981.1|[13272808]
これは、
 よくやる間違いの一つで、
 プルダウンメニューの横の方にかかれているSummaryの所を、FASTA形式に変更し忘れた
ためにおきたこと。上の説明を読んで、もう一度やってみよう。

今ダウンロードした塩基配列はミトコンドリアDNAの全長なので、およそ1万6千ベースある。非常に長いため、テキストエディタで表示させても、データの区切りがどこにあるか分かりにくい。ともかく、今の操作で5つのDNAデータがダウンロードできた。この後の操作は、DNA解析専用のソフトウェアを使って行う。


***FASTA形式について [#w94a6882]
FASTA形式は、複数の塩基配列をタを並べて扱うときに用いる形式の1つ。FASTA形式は非常にシンプルなデータ形式だ。今では、GenBankのBLAST検索や、様々な塩基配列解析ソフトウェアで広く使われている([[FASTA形式の詳しい説明はこちら>http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/fasta.shtml]])。

 簡単に説明すると、
 >配列名などの情報
 塩基配列またはアミノ酸配列
という構造になっている。下の囲みの中の配列は、ダウンロードした配列から、テキストエディタ(K2Editor)を使って、私が適当に作ったFASTA形式。
 >Japanese
 TTGACCGCTCTGAGCTAAACCTAGCCCCAAACCCACTCCACCTTACTACCAGACAACCTTAGCCAAACCATTTACCCAAATAAAGT
 ATAGGCGATAGAAATTGAAACCTGGCGCAATAGATATAGTACCGCAAGGGAAAGATGAAAAATTATAACCAAGCA
 >French
 CTTGACCGCTCTGAGCTAAACCTAGCCCCAAACCCACTCCACCTTACTACCAGACAACCTTAGCCAAACCATTTACCCAAATAAAGT
 ATAGGCGATAGAAATTGAAACCTGGCGCAATAGATATAGTACCGCAAGGGAAAGATGAAAAATTATAACCAAGC
 >African
 TGACCGCTCTGAGCTAAACCTAGCCCCAAACCCACTCCACCTTACTACCAGACAACCTTAGCCAAACCATTTACCCAAATAAAGTAT
 AGGCGATAGAAATTGAAACCTGGCGCAATAGATATAGTACCGCAAGGGAAAGATGAAAAATTATAACCAAGCAT
 >Chimpansee
 ACTCTGAGCCAAACCTAGCCCCAAACCCCCTCCACCCTACTACCAAACAACCTTAACCAAACCATTTACCCAAATAAAGTATAGGCGA
 TAGAAATTGTAAACCGGCGCAATAGACATAGTACCGCAAGGGAAAGATGAAAAATTATACCCAAGCATAATA
 >Gorilla
 GCTCTGAGCAAAACCTAGCCCCAAACCCACCCCACATTACTACCAAACAACTTTAATCAAACCATTTACCCAAATAAAGTATAGGCGA
 TAGAAATTGTAAATCGGCGCAATAGATATAGTACCGCAAGGGAAAGATGAAAAAATATAACCAAGCACGACAC

塩基配列の区切りに >生物名(改行) を入れれば、いろんなソフトウェアで解析ができるんだから、K2Editorに慣れた皆さんにとっては、とても親しみやすい形式だろう。


***塩基配列データのアラインメント [#bd810ef9]
''アラインメント''というのは、複数の塩基配列情報やアミノ酸の配列情報を整列させることだ。塩基配列情報を扱う上でとても重要な言葉なので、覚えておおこう。例えば、
 cytochrome b遺伝子:
 ヒト     ..attaaccccctaataaaattaattaaccactcattcatcgacctccccaccc...
 ゴリラ   atgacccctatacgcaaaactaacccactagcaaaactaattaaccactcattc...
という2つの配列はアラインメントされていない。ヒトとゴリラという異なる種から得られた配列だけれど、同じ遺伝子なので、きっと相同な領域はあるに違いない。しかし、こういう並べ方をすると、塩基配列のどの位置がどの位置に対応しているのか分からない。これをアラインメントすると、
 cytochrome b遺伝子のアラインメント:
 ヒト     atgaccccaatacgcaaaattaaccccctaataaaattaattaaccactcattcatcgacctccccaccccatc
 ゴリラ   atgacccctatacgcaaaactaacccactagcaaaactaattaaccactcattcattgacctccctaccccgtc
 塩基置換         *          *      *   **    *                   *        *     * 
となり、サイト(塩基配列上の塩基一つ一つの位置のこと)ごとに対応関係をとることができるし、どのサイトで塩基置換が生じているのかが、一目でわかる。

異なる生物から得られた塩基配列を複数並べて、構造上の対応関係を見たり、系統樹を作成する場合は、用いる塩基配列がアラインメントされていることが必須だ。そこで、皆さんのコンピュータに、代表的なアラインメントソフトウェアである、ClustalXをダウンロードして、インストールしよう。

***ClustalXのインストール [#u939002e]
下のリンクのいずれかをクリックしてみよう。下の方をクリックした場合は、clustalx1.83.zipというファイルをリストから探して、ダウンロードしよう。
-ダウンロード: http://bean.bio.chiba-u.jp/download/clustalx1.83.zip
または、
-ダウンロード: ftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/ClustalX/clustalx1.83.zip
ダウンロードすると、通常はデスクトップにclustalx1.83というフォルダができる。その中に入っている
&ref(授業/H18/情報処理/12/WS000002.JPG);をダブルクリックすればClustalXが起動する。

//***NJPlotのインストール [#cf8e260b]
//-ダウンロード: &ref(./njplotWin95.exe);
//または
//-ダウンロード:http://pbil.univ-lyon1.fr/software/njplot.html

***ClustalXによる塩基配列データのアラインメント [#ob93ae5d]
 それでは、下のサンプルファイルをダウンロードしてみよう。

&ref(授業/H18/情報処理/12/example1.fasta);

 このファイルには先ほどGenBankで検索したヒトのミトコンドリアDNAの配列の一部がFASTA形式で保存されている。ダウンロードされたファイルは、デスクトップに(デスクトップに無ければマイドキュメントに)入っているはず。

***ClustalXによるアラインメント手順 [#e2b9d642]
ClustalXの画面に移動し、example1.fasta を読み込む。
+メニューバーのFileメニューからLoadSequenceを選んで、先ほどダウンロードしたexample1.fastaを選択して読み込む。
--画面にシーケンスが表示されるが、アラインメントをしていないため、きれいにそろっていない。~
 操作: Fileメニュー / LoadSequence
&ref(授業/H19/情報処理/12/WS000003.jpg,50%);
+メニューバーのAlignmentメニューから、一番上のDoCompleteAlignmentを選ぶ。新しいウィンドウが開いたら、Alignボタンをクリックする。(ファイルの保存場所はここで変更できる)
 操作: Alignmentメニュー / DoCompleteAlignment
--アラインメントには数分かかる場合がある。データサイズが大きいほど、時間がかかる。進行状況は画面に表示されているので、しばらく待ってみよう。アラインメントが終了するとCompletedというメッセージが表示される。
+続いて、NJ法による系統解析を行う。メニューバーのTreeメニューからBootstrap N-J Treeをクリックしてみよう。次に開くウィンドウで、2番目のカラムで1000になっているところを100に変更してOKをクリックする。そうすると、そのうち、画面に、Bootstrap tree という文字と保存場所が表示される。今の例だと、example1.phb という系統樹情報の入ったファイルが、デスクトップに保存されているはず。~
&ref(授業/H19/情報処理/12/WS000005.jpg,50%);
 操作: Treeメニュー / Bootstrap N-J Tree : 2番目のカラム 1000 -> 100
 結果はもとのファイルと同じ場所の「元のファイル名.phb」 という名前のファイルに保存されている
--もしここまでの操作が上手くできなかったら、&ref(授業/H19/情報処理/12/example1.phb);をダウンロードして、以下の操作を行ってみよう。

***NJ Plotによる系統樹の描画 [#ja1affcf]
 先ほどClustalXで作成した系統樹を画面に表示させてみよう。
+デスクトップのclustalx1.83というフォルダに入っている、NJPlotというプログラム(&ref(授業/H18/情報処理/12/WS000003.JPG);)をダブルクリックして起動してみよう。
--エラーメッセージが出てもOKをクリック
+メニューバーのFileメニューからOpenを選んで、先ほどセーブした系統樹の入ったファイル(example1.phb)を選択する。
--外群の変更やブーツストラップ確率の表示・非表示なども簡単に行える。~
&ref(授業/H19/情報処理/12/Untitled-2.gif,40%);

ここまでできれば、&size(16){DNAデータバンクからデータをダウンロードして、系統樹を描くことに成功};ということ。


**第12回授業の課題 [#da0afe99]
-提出期限:''7月8日水曜正午''
***課題1.意見調査 [#wb324568]
+&size(16){http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?joho21 に、「自分のID」/12 という新しいページを作成し、下の囲みの中にあるアンケートをコピー・ペーストして、「回答:」の後に答えを書き込むこと。};

 *第12回授業・基本課題 
 **氏名:
 **課題への回答
 -今日の授業の進み方は?(はやい、丁度いい、おそい)
 --回答:
 -今日の授業の難しさはどう感じましたか(簡単 丁度いい 難しい):
 --回答:
 -難しいと答えた人は、特にどの点が難しかったですか?:
 --回答:
 -今日の授業は(分かった 半分ぐらいは分かった 分からなかった):
 --回答:
 -分からないと答えた人は、特にどの点が分からなかったですか?:
 --回答:
 -今日の講義で分からなかった用語があったら挙げてください:
 --回答:
 -授業に関する要望・質問があったらなんでもどうぞ:
 --回答:
 -課題2の答え
 --問1:
 --問2:
 ---Accession No.: 
 ---Description: 
 --問3:
 --問4: 


***課題2(復習):DNAデータの取得と系統樹作成 [#xb332aae]
 D88776,D88085,D88087,D88088,D88089,D88090,D88092,D88093,D88094,D88096,D88097,D88098,D88099,D88100,D88101
 上アクセッション番号の配列15個を、GenBankで検索しなさい。
 検索結果をFASTA形式でダウンロードして、ClustalXでアラインメントし、NJ法で系統樹を作成して、
 NJPlotで系統樹を表示しなさい。外群にはD88101(エゾシオガマ)を指定しなさい。可能ならば
 BootStrap解析を1,000回(あるいは100回)行いなさい。
-問1: 上の配列は全て同じ人が登録している。著者名(Authors)を答えなさい:
-問2: 「agaattaagt taattaattt agaattaaga taatgtgctg 
」という配列を[[BLAST>http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Nucleotides&PROGRAM=blastn&MEGABLAST=on&BLAST_PROGRAMS=megaBlast&PAGE_TYPE=BlastSearch&SHOW_DEFAULTS=on]]で検索しなさい。得られた結果のうち最上段に表示されたもののAccession No.とDescriptionを答えなさい。
-問3: NJPlotで表示させた系統樹を、画像でセーブし、レポート提出ページに添付しなさい。
-問4: 上の配列の最初の14個は全てPedicularis chamisonii(ヨツバシオガマ)の配列です。最後の一つはPedicularis yezoensis(エゾシオガマ)の配列。サンプルが得られた地名はそれぞれ下のようになっている。得られた系統樹とサンプルが採集された地点を比較して、どんな傾向が読み取れるかを簡潔に述べなさい。
 D88776      GASSAN 月山
 D88085      UNALASKA ウナラスカ
 D88087      DAISETSU 大雪山
 D88088      IWATE 岩手山
 D88089      RISHIRI 利尻
 D88090      POROSHIRI 幌尻岳
 D88092      AKITAKOMA 秋田駒
 D88093      HAYACHINE 早池峰山
 D88094      IIDE 飯豊山
 D88096      ONTAKE 御岳
 D88097      KISOKOMA 木曽駒
 D88098      YAYSUGATAKE 八ヶ岳
 D88099      KITADAKE 北岳
 D88100      ARAKAWA 荒川岳
 D88101      yezoensis
 注:地名は全て高山帯のある山または地域。
-評価:
--DNAデータバンクを正しく利用できているかどうか
--系統樹を正しく作成できているかどうか
--7点で評価
--<<参考資料>>
---地図:[[ 下記Fujii et al. 1997の地図に日本語地名をつけたもの>http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?plugin=attach&refer=joho20&openfile=Untitled-3.gif]]
---地図:[[ 下記Fujii et al. 1997の地図に日本語地名をつけたもの>http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?plugin=attach&pcmd=open&file=Untitled-3.gif&refer=joho21]]
---文献:Fujii et al. 1997. http://www.springerlink.com/content/e3825687p5lr6r1h/~
***予習課題:SQLiteのインストール [#f7670152]
以下のリンクから、SQLite3の実行形式ファイルをダウンロードしておくこと。
-SQLite3 WindowsXP用実行ファイル http://www.sqlite.org/sqlite-3_6_16.zip~
ダウンロードが成功すればデスクトップにsqlite3.exeというファイル&ref(授業/H19/情報処理/13/WS000006.JPG);ができているはず。