平成18年度首都大学での集中講義 †科目名: 系統進化特別講義 内容: 分子系統学の発展により、植物地理学の分野にも系統学的な視点が取り入れられるようになった。この講義では、伝統的な植物地理学から植物系統地理学への発展について説明し、テーマ別にいくつかの研究例と、個々の研究で用いられた解析方法について解説する。また、解析方法のいくつかについては、ソフトウェアを用いた実際の手順を説明する。受講者へは、サンプルデータの解析をレポート課題とする。講義の詳細情報が書かれたページをウェブサイト(http://bean.bio.chiba-u.jp/lab/)に作成するので、受講者は必ず参照すること。 このページのコンテンツ 重要:事前アンケートのお願い †授業日程は10月5, 6日に確定しました。授業では、受講者の知識レベルに合わせて、授業内容と課題を設定したいと考えています。受講者は、下の囲みの中をコピーして、メール本文にペーストして必要事項を記入の上、まで送信してください。メールの件名は必ず「系統地理:」で始めて下さい。 氏名: 学年: 講義にノートパソコンを持参することは可能ですか?: 最(大)節約法を理解していますか?: 最尤法を理解していますか?: 距離行列法を理解していますか?: 集団間の遺伝的分化や集団内の遺伝的多様性を表す用語を理解していますか?: あなたの研究テーマを教えてください: アンケート結果 †上記事前アンケートを集計した結果、多くの受講者が、系統推定の方法論には馴染みが無いことが分かりました。そういう人でも、なるべくついて来られるように、授業内容を調整中です。 10月5日(木)13:00 - 16:10 †この日の講義では、植物の分布域がどのようにして成立するに至ったのかを、系統学的な視点から研究する、植物系統地理学 Plant Phylogeography という学問分野について講義を行います。受講者の中には、植物系統学とか、分子系統学にそれほど詳しくない方もいるようなので、まず、植物地理学とはどういうものか、どんな点が面白いのか、何を明らかにしようとする学問なのかというところから始めます。次に、系統樹の見方や系統解析の方法を解説し、また、いくつか実例を見て、研究の大まかなイメージを掴んで貰います。用語の整理も行います。 課題1 †下の3つの論文のから1つ(あるいはいくつでも)、自分が担当するものを選んで読んで下さい。内容の全てを理解する必要はありません。その論文で
という3点を、10月6日(金)の10:00までににメールで答えを送って下さい。これが成績評価のレポートの1つめになります。詳しく書いてもらってもいいですし、携帯メールで簡単に送ってもらうだけでも構いませんが、メールの件名は必ず「系統地理:」で始めて下さい。 対象とする論文は、以下の3つです。首都大からオンラインで内容を見られないものについては、5日に配布します。
10月6日の授業では、皆さん自身にも、答えについていくつか補足説明をしてもらい、その上で、それぞれの論文で使われた方法と、結論を導き出すのに使われた論理を解説します。 10月6日の授業が終わるまでには、2つめのレポート課題を出します。内容は、それぞれの論文に関連したデータ解析を実際に行い、提出してもらうことです。あまり難しいものは指定しませんし、ほとんどの方法は、ウェブ上に解説がありあるものを選びますので、心配は無用です。また、メールで質問して貰えば、個々に解説します。 課題の内容は、授業の進みぐあいを見てから決めることにします。 10月6日(金): †教科書を用いた系統地理学の解説 †この日の午前中からは、教科書からの抜粋テキストに基づいて、授業を進めることにしました。 Ecological Genetics -- Design, Analysis, and Application. A. Lowe他著. 2004. Blackwell Publishing. 第5章:種内の系統関係と系統地理学 Intraspecific phylogenies and phylogeography. (参照するページ範囲: P.151 - 184.) 上の教科書から授業で使う箇所を抜粋した資料を人数分準備しましたので、前もって自分でコピーしておく必要はありません。 内容: †受講生の人数が少ないので、研究室セミナーのように対話形式で、全員が手元の同じ資料を見ながら、対話形式で講義を行います。
課題1で用いた論文の研究内容解説 †10月6日16:20 - 17:50 教室セミナー †汎熱帯海流散布植物の系統地理学的研究 †ほとんどの陸上植物は、種子や果実などの散布体を何らかの方法で分散させることで、分布域の維持や拡大を行っている。しかし、散布体の分散は様々な要因で制限されるため、多くの植物はごく限られた地域にしか分布していない。大陸同士を隔てる海は、分散を妨げる非常に大きな制限要因であり、このことが、大陸間に見られる植物相の顕著な違いを生み出しているのだろう。ところが、陸上植物の中には、海を利用して散布体を分散させることで、全世界の熱帯・亜熱帯の海岸域に、広く分布したと考えられる植物が存在する。我々はこのような植物を、汎熱帯海流散布植物と呼んでいる。 汎熱帯海流散布植物の分布域は極めて広く、熱帯・亜熱帯域を中心に、地球を帯状に一周するほどである。このような分布パターンは、移動性の高い動物では知られているが、固着生活を基本とする植物ではほとんど見られ無い、特殊なパターンである。我々は、汎熱帯海流散布植物がこのような分布域を獲得するに至った進化の過程と、広大な分布域の中で種としての同一性をいかにして保持しているかを明らかにするため、1) 分布域全体をカバーするような地域からのサンプリングと、2) 分子マーカーによる集団レベルの解析を2つの柱として、研究を進めてきた。調査範囲があまり広いため、当初は実現が危ぶまれたが、科学研究費補助金(海外学術調査)等の助成や、多くの協力者の助けもあって、6年がかりでようやく一通りの試料の収集を終えることができた。 6年間の現地調査で特に注目してきたのは、グンバイヒルガオ(ヒルガオ科)、ナガミハマナタマメ(マメ科)、オオハマボウ・アメリカハマボウ(アオイ科)、アメリカヒルギ(ヒルギ科)、ハマアズキ(マメ科)の6種である。この6種には、1種のみが地球を一周するほどの分布域を持っているもの(グンバイヒルガオ)から、大洋を挟んで姉妹種が分布しているもの(オオハマボウ・アメリカハマボウ)までが含まれている。これらを用いることで、大洋内の集団間、大陸などの地理的障壁をはさんだ集団間、外部形態の異なる近縁種間や亜種間、など、様々なレベルで集団間の遺伝的分化の程度を比較することができる。 このセミナーでは、これまでに得られた分子マーカーによる解析の結果を、代表的な海流散布植物について紹介する。 掲示板 †参考書 †
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