Power Pointを使ったプレゼンテーション作成 − 論文紹介プレゼン作成 −

前回授業では、Power Pointでプレゼンテーションを作成する際に必要な、図形の作成を簡単に解説した。皆さんは7月には実際のプレゼンテーションを作成することになるのだが、いきなりパワーポイントでプレゼンテーションを作れと言われても、何からはじめていいかわからないかもしれない。そこで、今日の授業では、実際に1つ、プレゼンテーションを作る練習をしてみる。プレゼンテーションの内容としては、4年生になれば必ず一度は経験する、「論文紹介」を選んだ。さらに、卒研等で必要になってくる、論文検索についての解説も行う。最後に時間があれば、次回授業から使用する、データ解析ソフトウェアR(アール)のインストールと動作確認を行う。

第6回授業、Wordを使った仮想レポート作成についての補足

→ 課題結果ページ参照

第8回授業の獲得目標: [worried]

  • 1. 正規表現:後方参照の復習
  • 2. プレゼンテーションにおける次の2つのポイントを理解する
    • 「自分が主張したいメッセージ」を意識する
    • 「人の意見と自分の意見を区別すること」を意識する
  • 3. 論文データベースを使った研究論文の検索を体験する
  • 4. 論文紹介を例にして、Power Pointでプレゼンテーションを作成する
    • 一番大切なのは、聴衆に、あなたのメッセージを分かって貰うということ

正規表現:後方参照の復習 [smile]

前回課題でいろんな後方参照の例を提出してもらった。そのうちの1つを使って、後方参照の意味をもう一度おさらいしてみよう。

*昨年の学生の提出例: タイトル: 「題名:梅雨の憂鬱を晴らす」
対象テキスト:  (´・ω・`))(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`))(´・ω・`)
検索文字列:([´]+)([・ω・]+)([`]+)
置換文字列:\3\2\1

後方参照と他の検索置換の意味の違い

後方参照と普通の正規表現の意味の違いについて質問がいくつかあった。後方参照では、検索文字列で条件にマッチした文字列を、そのまま置換文字列に利用できるという点が他と異なる。

例えば、

1998 05 12
2008 06 04

という日付の年月日を月日年の順番に入れ替えたいとき、普通の検索置換や後方参照以外の正規表現置換では難しい。なぜなら、置換文字列に特定の文字列を指定しなければならないから。

例: 検索文字列: 05  置換文字列:12
   *置換文字列には12という具体的な文字列が使われている。
    06について置換をするときは、06を検索して04に置換する
    個別の命令が必要

しかし後方参照では、検索文字列(正規表現)でマッチしたテキスト中の文字を、そのまま置換文字列に用いることができる。

例: 検索文字列^([^ ]+) ([^ ]+) ([^ ]+)$
   置換文字列 ¥2 ¥3 ¥1
      *置換文字列にいちいち06とか04ちか書かなくても、検索のときに
    正規表現に一致した文字列をそのまま使える

この授業でいろいろと分からないことがあると悩んでいる人へ

ところで、アンケートによると、パワーポイントの操作とか、正規表現とか、授業の内容が分からないという意見がある。でも、ここでもう一度、この授業で伝えたい内容を確認しておきたい。

この授業で習ったこと。全部をすぐに自分でできるようにならなくてもいい
「授業で習ったようやれば、こんなことができるはずだ」
「こういうことはコンピュータにやらせれば簡単にできるはずなので調べてみよう」
そういう理解を持って貰うだけでも十分です。課題がこなせていれば、良しとしましょう。

一度やったことがあれば、(あるいは、コンピュータを使えばこんなこともできると知っていれば)、いつか問題に直面したときに、コンピュータを使って解決しようと思えるかもしれません。

Power Pointを用いた論文紹介プレゼンテーション作成  [smile]

プレゼンテーション・レポートに共通するメッセージの重要性  [smile]

プレゼンテーションでは、聴衆に何を伝えたいか(これを「メッセージ」と呼びます)が最重要ポイント。しかも、与えられた短い時間の中で、発表者のメッセージの意味や面白さまでを伝え切らなくてはならない。
卒研発表や学会発表では、「どんな研究をして、どんな発見をしたか」がメッセージになるので、プレゼンテーションは「背景・目的・方法・結果・考察」のように定式化されている。

論文紹介とは何か

ここで論文紹介というものを例にとって考えてみよう。論文紹介というのは研究室のセミナーでよく行われるもので、発表者(今回の場合、あなた)が、何かのトピックについて論文を読み、その内容を他の参加者に紹介するものだ。

ここで登場人物は最低でも3人いることに注意しよう:

論文紹介をする人(以下、あなた)
論文紹介を聞く人(以下、セミナーの参加者 or 聞き手)
論文の著者

それぞれの登場人物の役割は、次のようなもの。

  1. あなたはその論文を紹介することで、「あなた自身の持つメッセージ」をセミナーの参加者に伝えたい。

    多くの論文紹介であなた自身からのメッセージは、次のようなものであるはず。

    • 最近、こういう面白いこと(あなたが面白いを思うこと)が分かった
    • 最近、こういう新しい方法が開発された
    • 卒研であなたが研究するテーマでは、こういう研究があってここまでは分かっているけれど、こういうことはまだ分かってない。
  2. セミナーの参加者は論文紹介を聞くことで、何か有用な情報や、新しい情報を得ることができる。そういう情報を与えらるかどうかは、論文紹介をしたあなたの責任。(注:教員は教育目的で参加者になっている場合もあります)
    • 「なるほど!そんなに面白いことが分かったんだ」
    • 「なるほど!すいう新しい方法があるんだ」
    • 「なるほど!君の研究テーマっていうのは、そういう位置づけなんだ。」

      こういう感想を持たせることができたら、大成功。

  3. 論文の著者は、その論文で、「科学における何らかの新知見を、(論文の著者が)発見した」と全世界に向かって主張している。論文の著者の主張が、正確に、参加者に伝わるかどうかは、紹介するあなたの責任だ。
    • このとき、論文に書かれている事実(引用含む)論文の著者の意見あなたの意見ははっきりと区別して発表しよう
    • 全部を読み切れず、著者の言っていることを適当にあなたの想像で補ってしまってはいけない

演習: 意見の区別

以前に授業で紹介した日経サイエンスから、次の記事を見てみよう

2009年5月号P.70-73.には、N. フィアラ氏の「グラフで見る牛肉消費と温暖化ガス」(日経サイエンスという記事が書かれている。この記事の見出しに書かれていることが著者のメッセージの要約だろう。

  • 著者のメッセージは、「私達の食卓にのぼる牛肉の生産には、きわめて大きな環境コストがかかる。とてつもなく大量の温暖化ガスを生み出すのだ」というもの。
    ここで、この記事(引用が十分では無い点が、科学論文とはやや異なる)を例にとって、論文を聴衆に紹介するときに陥りやすい、悪いパターンを1つ紹介しよう。
  • 悪い例: 記事の中の全ての文章を著者の意見として解釈し、最後に、「...と著者は言っています(or書いています)」と付け加える。一見、著者の意見と自分の意見を区別できているように見えるかもしれないが、一般的な事実(あるいは著者以外の第三者の意見)と、著者の意見は区別できていない。それに、こういう紹介をするのなら、聴衆は自分でその論文を読む方が手っ取り早い。
    • 例えば1段落目: 「『自動車や石炭火力発電所、あるいはセメント工場なども環境に悪影響を及ぼすことはよくしられている。だが最近まで、こうした議論で食物が問題にされることはなかった』、と著者は言っています。」  : まあ、2番目の文章は著者の意見のようにも見えるかもしれないが、1番目の文章まで含めて「著者は言っています」などと紹介していまうと、何か不自然ではないだろうか?
      また、
    • 2段落目の最初、「『2006年の国連食料農業機関(FA0)の報告によると、私達の食生活、とくに食肉の消費は、CO2(二酸化炭素)やメタン、一酸化二窒素などの温暖化ガスを輸送や工業よりも大量に排出するという。』、と著者は言っています。」 : と紹介されたとすると、どうだろうか?
      『』の中身は著者の意見では無く、FAOという第三者が言っていることなのだから、「著者は言っています」などと述べてしまうと、明らかに不自然になってしまう。
      つまり、先ほど論文紹介に出てくる登場人物は、最低でも3人いると言ったが、実はもっと沢山いる
      1. 論文紹介をする人(以下、あなた)
      2. 論文紹介を聞く人(以下、セミナーの参加者 or 聞き手)
      3. 論文の著者
      4. 一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見
      この4番目の点、「一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見」にも十分注意を払って聴衆に情報を伝えなければならない。
      これはどんなレポートや報告書でも同じことなので、常に意識しておく必要がある。(もし、今の説明を聞いてもよく分からなかった人は、何かの論文や記事を、実際に人に紹介してみるといいだろう。言いたいことがちゃんと伝わったのなら、あなたは登場人物の区別がちゃんとできているということだ)。
      さて、そうすると、上のN. フィアラ氏の記事は、どうやって紹介すれば良いだろうか?実際のところ、先ほどあげた2つの段落の内容は、記事のイントロダクションに書かれている内容で、問題点の背景を説明している。つまり、著者が、後から出す自分の意見を正当化するために、まず読者に「一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見」を伝えていたわけだ。
      ここで、「一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見」は誰にとって(記事を紹介するあなたにとっても、紹介を聞いている聴衆にとっても)、「一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見」なので、「...と著者は言っています」などと付け加える必要は無い。
  • 良い例:記事の中で「一般的な事実、あるいは、周知の意見や発見」は証拠と共にあなたが聴衆に伝える。
    • 例えば、この記事の背景を聴衆に紹介するとき、
      「自動車の排気ガス、火力発電所、工場などが大量の温暖化ガスを排出することはよく知られていますが、同様に、食肉の消費も大量の温暖化ガスを排出することが知られています」、と言ってしまっても大丈夫。。。。。でも、証拠とか周知の事実とかはどうやたら分かって貰えるのだろうか?
      そういうときこそ、引用の出番だ。前回の授業でも引用は自分の意見を証拠を使って強化する、とても大事な役割を持っていると説明した。
      上の例を引用を使って書き直すと、
      「自動車の排気ガス、火力発電所、工場などが大量の温暖化ガスを排出することはよく知られていますが、同様に、食肉の消費も大量の温暖化ガスを排出することが知られています(Steinfeld. et al. 2006)」と書いて、最後に証拠である引用文献, "H. Steinfeld, P. Gerber, T. Wassenaar, V. Castel, M. Rosales and C. de Haan. 2006. Livestock's Long Shadow: Environmental Issues and Options. United Nations Food and Agriculture Organization. http://www.fao.org/docrep/010/a0701e/a0701e00.htm"と示しておけば良い。(この引用文献は、N. フィアラ氏の記事にも書かれていた。)
      もちろん、この証拠が嘘では無いかどうかは、ちゃんと自分で読んで確認しておいたほうがいい。

メッセージを文章で表現することの大切さ

ところで、上で説明したようなことは、どんなレポートや、論文を書く場合においても共通している。
大学で研究を行う場合、あるいは、将来知的労働に従事する場合、文章を書くということは、いつもかならずやらなければならないことになる。なので、ぜひ、大学1年のうちから、文章を書くことの大切さを意識しつつ、1つ1つのレポートに取り組んでみて欲しい。
下の本は、レポートを書くということについて、具体的に分かりやすくまとめられている。

CV098.jpg

戸田山 和久. 論文の教室—レポートから卒論まで. 297ページ. 出版社: 日本放送出版協会 (2002/11)

(あと、Google検索をして見つけたんですが、テクニカルライター・冨永敦子さんの「プロから学ぶ「分かりやすい文章の書き方」講座」も参考になりそうです。)
余談だが、もしこの中で、将来研究者になろうと考えている人がいる場合、次のようなことも知っておいた方が良い。

日本学術振興会特別研究員DCは、博士課程の3年間に、お給料をもらって研究ができるという素晴らしい制度
申請者の3割弱が採用される(千葉大生物にも何人か採用されている人がいる)

では、どういう人がやれば採用されるかというと、

  • (1)学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること、
  • (2)研究計画が具体的であり、優れていること、
  • (3)研究業績が優れており、研究計画を遂行できる能力及び準備状況が示されていること、
  • (4)諸分野における研究者養成の必要性に配慮する

などで、最初の関門は審査員6名による、

書類審査

下の様式をちょっと見てみるといいが、ワードで10ページぐらいの作文を書いて、自分が博士課程でやろうとしている研究がどれほど意義のあるもので、自分にそれをどれほど実施する能力があるかということを、アピールする必要がある。
文章でのアピールがうまくできないと、採用されることは、決してない

論文の探しかた [smile]

さて、本題にもどり、紹介すべき論文を文献検索ページを使って探す方法を紹介しよう。
たいていの場合、「面白い論文を探してこい」なんて言われたとしても、どうやっていいか分からないだろう。始めのうちは先輩や先生に相談するのが一番手っ取り早い。でも、自分で何か興味のあるテーマを持っているのなら、次のような方法で論文を探してみよう。

ここでは千葉大学が契約している論文検索データベース、SCOPUSを使って論文を探す方法を紹介する。

  1. キーワード検索:

    論文探しの第一歩は、自分が興味を持った内容を表す適当なキーワードを使って、文献データベースをサーチすること。例えば、世界1大きい花を持つラフレシアについて調べてみたいと思ったら、Scopusにアクセスして、Search forのところに

    Rafflesia
    と入力する。
    Untitled-1.gif
    そうするとしばらくして、検索結果の一覧が表示される。
    Untitled-2.gif
    表には以下のような情報が表示されている。
    Document      Author(s)  Date     Source Title   Cited By
    論文タイトル 著者      発表年  雑誌名        被引用回数

    被引用回数というのは、その論文が他の論文で引用されている回数だ。この数が大きいほど、その論文が注目されている論文であることを示すことが多い(最近はこの「被引用回数」というのが、論文の価値や、雑誌の価値の評価に使われることもある)。

    また、タイトルの下にはいろんなボタンが表示されている。

    [Abstract + Refs]  論文の要旨と引用文献リスト
    [View at Publisher] その論文の電子ジャーナルの出版社へのリンク
    [S・F・X] 千葉大学の図書館情報システムで、その論文にアクセスする方法が表示される
    • 論文の内容そのものを見たければ、「View at Publisher」(あるいは、「S・F・X」をクリックする。千葉大学で契約している電子ジャーナルならば、内容が表示される。

上の検索結果から、4番目の論文を見てみよう。"Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America"という雑誌で、略してPNAS(日本語では「プロナス」とも言う)という雑誌に発表された論文で、ラフレシアの系統関係について書かれた論文らしい。2004年に発表された論文だけど。他の論文に15回も引用されているということが分かる。つまり、この論文を引用して書かれた、これより新しい論文があるということだ。

入力したキーワードでヒットしなかったもっと新しい論文が、Cited Byのところにあるかもしれない。

そこで、「Cityted by」の15という数字をクリックすると、この論文を引用している論文のリストが表示された。
Untitled-4.gif

タイトルとジャーナルのところを見て行くと、2007年にScienceに発表された論文が2番目にある。タイトルは、「Floral gigantism in rafflesiaceae」:(ラフレシア科における花の巨大化)。面白そうだ!
Journal の検索では、こうやって、ScopusやGoogle Scholar、また、その論文の電子ジャーナルのサイトにのっている「Cited by」のリストから、どんどん論文を辿って行き、目的の論文や、興味のある論文を探す。その分野のブレークスルーになった論文を検索して、「Cited by」をたどれば、その研究の発展の経過と、最新の研究まですぐにたどり着くことができる。
さて、いま見つけた「Floral gigantism in rafflesiaceae」の下にある「View at Publisher」のボタンをクリックすると、出版社におけるその論文のページが表示される。左の方の「Full Text (HTML)」か下の「Read the Full Text」をクリックすると、内容をウェブページとして読むことができるし、「Full Text (PDF)」をクリックすると、PDF(Portable Document Format)を読むことができる。

今回はこの論文紹介するプレゼンテーションを、Power Pointで作ることにする

なお、

英語なのは仕方が無いです

練習:

上とおなじ検索をGoogle Scholar http://scholar.google.com/ を使ってやってみよう。また、「引用元」(上のCited byに相当)を表示させてみよう。

論文の読み方

論文はウェブページ上で読んでも、PDFでも読んでもどちらでも構わない。それぞれに利点があり、

  • HTML(ウェブページ):リンクをクリックするだけで、すぐに引用文献を読める。画像がフルサイズで読める。Supplement Data(今回よむScience誌では、SOM (Supporting Online Material))も簡単もクリックするだけで見ることができる。
  • PDF:インターネットに繋がっていなくても読める。印刷時のレイアウトそのままで読める。印刷して読むのに最適のページ数になっている。

    私は普段は、HTMLで読むことの方が多いが、ノートパソコンにダウンロードして、PDFでも読むことも多い。今回はPDFを使って、画像やテキストをPower Pointに移動して使う方法をやってみる。

  • PDFの保存:
    では、まず、PDF先ほどのリンクからPDFを表示させる(必要に応じてディスクに保存する)。今回は授業用に、下の制限ページにPDFを置いてある。ジャーナルのウェブページに繋がりにくい場合は、下のリンクからダウンロードすること。
    http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?joho20

ここから先は論文の読み方に関する説明

  • 内容を見る:

    たった1頁の短い論文だ。論文の形式は、

    アブストラクト
    イントロダクション
    材料と方法
    結果
    考察
    引用文献
    というのが一般的だが、この論文はScience誌のBreviaというカテゴリーに入る論文で、広範な分野の科学者に魅力的で理解可能な課題に関する研究成果を600〜800語の本文と1点の図表、および6件以内の参考文献で発表したものだ。そのため、上のような区分は無い。

    ウェブページの方にはアブストラクトが載っているので、ざっと読む。また、1点しかない図版が非常に重要だろうから、図版の説明も読む。そうすると、この論文は、「ラフレシア科の系統関係をミトコンドリアDNAの塩基配列を用いて明らかにしたもので、花の大きさの進化について議論している」ぐらいのことが分かると思う。このとき、「この論文をなぜ他の人に紹介したいのか」ということをちゃんと考えておく。出たばっかりの論文を紹介する限り、

    最新の研究成果だから紹介する
    という理由は使えるので、他の理由は、論文を読みながら考えればいいだろう。

    さて、いくら1ページ限りの論文だとはいえ、この授業時間内で詳しく見て行くのは不可能だろう。あとは各自で読んで貰うとして、論文を読むときに注意するべき点をいくつか挙げておこう。

  1. 著者のメッセージを常に意識する
    • イントロダクションには必ず、著者がどうしてこの研究をやったのかということが書かれている。英語だから分かりにくいとは思うけど、そのメッセージを最初に見つけよう。多くのメッセージはこんなの:
      〜〜という重要な問題を・・・という方法で(orアイデアで)解決したぞ(どうだ、すごいだろ!?)。
  2. 著者のメッセージに含まれる「問題点」は「しかしながら(However)・・・」という言葉と結びついている場合が多い
    • 科学論文の場合、著者のメッセージは、必ず、「・・・という問題を解決した」という形式に読みかえられるはずである
    • 「・・・という問題」の部分はたいていの場合、「これまで・・・ということは分かっている。しかしながら、・・・・ということは分かっていない(だから問題だ)。」と書いてあることが多い。
  3. 問題点の重要性がどう主張されているか、注意しよう
    • 論文の価値は、著者が解決した問題がどれほど重要なものであるかで決まる。そのため、イントロダクションでは、問題点の重要性を、事実に基づき、論証しているはず。
      • 上で言う「事実」は大抵、他の研究で証明された事実。引用論文を見れば、その事実がどのような方法で明らかにされたのかが分かる。

論文紹介テンプレート(Power Point書類)を使ったプレゼンテーション作成 [smile]

それでは、これから説明する内容に従って、PowerPointのプレゼンテーションを作る。時間節約のため、ひな形を準備しておいた。下のリンクからファイルをダウンロードしよう。
http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?joho21

以下、説明はダウンロードした書類の中に書いてある。画像などの編集が必要なところは、□の中にコメントしてある。授業では、PowerPointの書類とPDF、ウェブページを同時に開き、図版のコピーペーストや、説明文の挿入を解説する。
なお、論文紹介がどういうものかということは上で説明した。
大事なことは、「あなたがある論文読んで、他の参加者に面白さや注目すべき点を理解して貰えるように紹介すること」だ。つまり、「他の参加者に理解してもらう」という点で、プレゼンテーションの技術が必要になってくる。論文紹介のよくある失敗例は、

・論文の内容を全て逐語訳して、レジメを参加者に配布
・発表するときにも、レジメの内容を読み上げるだけ

というもの。参加者にとっては、下手な日本語訳を聞かされるよりは、自分でその論文を読む方がよっぽどいい。

ここでは、上の論文を紹介する場合の話しの大筋を考えて、その中から、Power Pointを使ったプレゼンテーションに仕立てた方が良い項目を選び、実際のスライドを作成しよう。

超簡略版:論文紹介テンプレート(筋立て)

以下、論文紹介で使われる話しの筋立てを常に簡略化して示す:(上の論文を例にとって、あなたからの発言例を挙げてある)

  1. 研究の背景、とくに問題になっている事実を聞き手に納得させる:
    • 「Raflessia科は世界一大きな花を持つことで有名です。でも、その系統学的位置づけは様々な理由で困難でした。最近mtDNAを使ってMalpighialesの近くに来ることが示されました。しかしながら、Malpighialesの中での位置は、サンプルが不十分だったために分かっていないませんでした。
      • 論文のイントロで背景を述べているところは、たいてい事実を述べている。そういう事実の紹介で、「ここで著者は・・・・であることを述べています」なんていう紹介の仕方はまどろっこしい。
      • ここは事実の紹介なので、その事実を示すような証拠を聞き手に見せる方が良いこの例では、「ラフレシアがMalpigialesに近い」という事実を図表を使って示せばよいだろう。また、系統関係の解析がどうして難しかったのかも、先行研究のデータを用いて示したいものだ。
  2. その問題を解決するのに、著者らが何した(orどういうアイデアを思いついたのか)を聞き手に理解させる。
    • そこで著者らは、Malpighialesの全ての科を用いて、mtDNAによる系統解析を行いました。
      • 上の問題を解決する方法に関して言えば、とても単純。Malpighialesにはこれまで使われていない沢山の科があることを示して、それを全部含めないと正確な位置づけは分からないと、聞き手に納得させる。また、系統解析に十分な数の塩基配列を用いていることも示す。
      • 考察のところで出てくる花の大きさの進化についての解析では、様々な方法を用いている。花サイズの変化が急速に起きた現象であることや、分岐年代について、それぞれに適した方法を用いて解析を行っている。一つ一つの実験が、どういう具体的なデータを出すためにやったものかを十分に理解しておこう。自分で再実験を行うつもりで、読めば、理解が助けられたり、問題点を見つけられたりする。(とはいえ、これも全部を解説すると時間内には終わらないので、今回は割愛)
  3. 結果から何が分かったのかを聞き手に理解させる
    • その結果得られた系統樹で、Rafflesiaはトウダイクサ科のクレードの中に含まれることが示されました。
      • 結果の系統樹をPDFやウェブページから切り取ってきて、スライドに貼り付ける。補助的なコメントをつけて、聞き手の理解を助けられればさらによい。
      • この研究の直接の解析結果はSOM(論文ウェブページにリンクがある)に入っているので、そこからコピーしてきて貼り付ける。
  4. この結果がどういうことを示しているのか(このデータの価値)を、聞き手に納得させる
    • 著者らはさらに、ラフレシアにおける花のサイズの進化について解析を行ったところ、小型の花から大型の花への、79倍にも及ぶサイズの変化が、ラフレシアの系統でおよそ4千6百万年の間生じたとのことです。
  5. この論文で用いた解析方法についてもSOM(論文ウェブページにリンクがある)を読んで、まとめて紹介する。
    • 論文紹介は、どういう方法を使ったら、どういう結果が得られたかということがとても大切。方法は聞き手が理解しやすいように、うまくまとめて紹介しよう。

第8回授業の課題

  • 提出期限:6月10日水曜正午

課題1.意見調査

  1. http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?joho21 に、「自分のID」/08 という新しいページを作成し、下の囲みの中にあるアンケートをコピー・ペーストして、「回答:」の後に答えを書き込むこと。
  • 手順
    1. 画面の上の方にある〔 新規 〕をクリック
    2. ページ名を尋ねる入力スペースが表示されるので、半角英数字で、ドット・スラッシュ・0・8を下のように入力
      ./08
    3. 下の囲みの中をコピー・ペーストし、回答や答えを書き込む
      *第8回授業・基本課題 
      **氏名:
      **課題への回答
      -今日の授業の進み方は?(はやい、丁度いい、おそい)
      --回答:
      -今日の授業の難しさはどう感じましたか(簡単 丁度いい 難しい):
      --回答:
      -難しいと答えた人は、特にどの点が難しかったですか?:
      --回答:
      -今日の授業は(分かった 半分ぐらいは分かった 分からなかった):
      --回答:
      -分からないと答えた人は、特にどの点が分からなかったですか?:
      --回答:
      -今日の講義で分からなかった用語があったら挙げてください:
      --回答:
      -授業に関する要望・質問があったらなんでもどうぞ:
      --回答:
      ***課題2. 良くできていた図版
      --1:
      --2:
      ***課題3。予習課題
      -回答:
      ***課題4. タイピング練習の成果
      --&ref(./添付したファイル名をここに書き込む);
      

課題2 前回課題の評価を自分でやる

http://bean.bio.chiba-u.jp/joho/index.php?joho21 に前回の提出課題一覧(1-40)があります。この中から、自分が提出した作品以外で最もよくできた図(説明用図版として分かりやすく、工夫されているもの)を2点選び、図版につけられた番号を、上記回答欄の1, 2(良い方が1)に記入しなさい。

課題3:(予習課題):

次の設問に答えてください。また答えた理由をなるべく分かりやすく、上記解答欄に書いてください

  • 設問:「A君とB君の兄弟は、おやつをとる順番を、いつもじゃんけんで決めています。でも、B君は何となく、 A君の方がじゃんけんに勝つ回数が多いなーと感じています(ケーキでいちごの乗ったところを貰えない ことが多い...)。ある日、B君がA君に「もうじゃんけんで決めるのやめようよ。お兄ちゃんはじゃんけ んに強すぎるもん」って言うと、A君は、「そんなことは無いよ。だって、じゃんけんなんだから、単なる 偶然だよ」と言ってとりあってくれません。最近20回分のじゃんけんの結果をみると、A君の勝ちが15回、 B君の勝ちが5回でした。この結果から、A君の方がB君よりもじゃんけんに強いと言っていいでしょうか?」

課題4 タイピング練習:次週からはキー入力による操作が中心なのでタイピングに慣れておくこと

  • 以前ダウンロードした、タイピング練習ソフト:Ozawa-Kenを使って、どの練習でも良いから(どの指でどのキーをおすかということから練習するなら、K(かわら割り)からがおすすめ)、しばらく練習。 ソフトウェアを終了(Qを選択)するとパスワードが表示されるので、覚えておいて、Ozawa-Kenのホームページ(http:www.higopage.com/ozawa-ken/)にアクセスして、パスワードを入力。表示されたレベルを表す画像をダウンロードして、自分のページに添付すること。画像が出ない場合は、表示されたレベルをWinShotで切り取って貼り付けても良いです。

    例:ozawaken.gif

    • 最初のアンケートで、タイピングが得意でない人がけっこういたので、こういう課題を作ってみました。

添付ファイル: fileWS000003.JPG 4179件 [詳細]

Last-modified: 2015-05-13 (水) 16:42:46 (3481d)