Wordを使った文書作成 †
最初の授業で行うアンケート調査で、この授業で学びたいことの上位に毎年来るのが、Wordを使ってレポートを書く方法というものだ。今回の授業では、Wordを使って、レポート等の文書を作成する方法を学ぶ。
第7回授業の獲得目標: †
- 1. レポートとは何か?
- 2. Wordを使った文書作成: 見栄えの良いレポート作りの方法を練習する
- 3. Wordを使った文書作成に習熟する
- 4. 正規表現:後方参照に慣れる
レポートってどういうもの? †
みなさんは、これまでに、いろんな授業で何度もレポートを提出しているはず。ところが、「何度レポートを出しても良い評価をもらったことが無い」という人が時々いる。そういう人は、もしかするとレポートのどういう点が評価されるのか、わかっていないのかも知れない。生物学科では3年になると毎週のように実験があり、2週間に1度は実験レポートを書かなければいけないのに、レポートの書き方をわかっていないようでは困ってしまう。
Wordを使ってできる「読みやすい」レポート †
あなたのメッセージを分かりやすく相手に伝えるために、Wordを使ってできる限りのことをしよう
上で述べたようなレポートについての諸注意は、各自でよく考えて、十分にトレーニングする必要があるため、授業でこれといったテクニックを教えられるわけではない。でも、この授業では、ワードを使って可能な限り読みやすいレポートを作り、採点者による原点を減らす努力をしてみよう。採点者は、たくさんのレポートに目を通さなければならない。そんなとき、読みやすいレポートがあると、良い点をつけたくなるのは当然だ。
- どのようなレポートを求められているのかを十分理解する。「簡潔な説明」を求められている場合もあるし、「詳細な証拠を用いた論述」を求められている場合もある。趣旨に応じた長さのレポートにする(不要なデータを加えて無理矢理長さを伸ばすのはだめ)
- 何ページもあるようなレポートには表紙をつける(1頁だけで済むようなレポートに、表紙は必要無い)。ページ数が非常に多く、章立てが必要になるようなら(例えば卒論や修論)、目次をつける。(※表紙や目次の要・不要は担当教員によっても違うので、確認すること)
- 学籍番号、氏名は必ず書く
- 複数ページにわたるレポートでは、最初に摘要や要旨を作る。短い文章で伝えられるメッセージの方が、わかりやすい。
- 見出しを使う。それによって、そのセクションで自分が主張したいことの種類や内容を、相手に簡単に伝えることができる
- なるべく読みやすい文字やレイアウトを用いる
- Wordを起動して、report_example.docxを開く。
新規作成で新しい文書を作成し、report_example.docxと同じようなものが作れるかを試すのが、この演習の目的。
- 長いレポートには表紙が必要(※短いレポートなら不要。1枚だけのレポートに表紙はつけないほうが、省資源にもなる)
- 千葉大のホームページから、千葉大のロゴマークをコピーして、表紙に貼ってみよう。ウェブページの画像はコピー・ペーストでワード文書に貼り付けることができる
- 千葉大ロゴを右クリックして「画像をコピー」
- ワードのページにペースト
- タイトル、学籍番号、氏名、提出日を入力。
- タイトル関係の文字を選択し、センタリング(中央揃え)
- 学籍番号等の情報を選択し、ルーラーで右寄せ(ルーラーが表示されていないときは、「表示」タブで表示させる)
- 本文に文章を書き込む
- メニューバーの「挿入/改ページ」で、文書の最後にページ区切りを挿入して新しいページを作成。
- ある程度の長さのレポートを書く場合、
要旨(摘要)
本論
結論
引用文献
とか
要旨
序論
材料と方法
結果
考察
引用文献
とか、最初に構成を決めておくと書きやすくなる
- 挿入タブから、ページ番号をページの下部に挿入
- (ヘッダー・フッターの部分をクリックすると、、「ヘッダー・フッターツール」が表示される。ページ番号や日付などを挿入できる)
- 表紙にはページ番号を入れたくないので、「先頭ページのみ別指定」にしておく。
- この場合は、「開始番号」を0にすることで、表紙にページ番号が入らない。
- 文字の大きさや書体を見やすいように整える
- 表の作成は「挿入」タブから罫線ツールで
- 図の作成は「挿入」タブから図形ツールで
- 論文から図を切り取ってきて証拠に使う
- クジラとカバに近縁であることを示した論文を見る。Nikaido et al,1999, PNAS
- クジラとカバの関係を示した系統樹を表示させる
- Snipping Tool(あるいはPrtSc)で使いたい図を切り取る
- Wordの書類に行きペースト
- 画像を右クリックし、レイアウトで、文字と画像の関係(背面、全面、回り込みなど)を調整する
- 図には必ず番号とレジェンド(説明)をつける。引用もとも明示する。
- 引用文献を証拠に使って、相手を納得させよう
レポート作成の操作例: †
- 表紙の作成
- 2ページ目にレポートの構成を書き込む
はじめに
目次
1.実習場所と実施日
2.観察植物リスト
・リストの作成方法
・作成したリスト
3.注目した植物の観察結果
1.
2.
おわりに
参考文献
- 注:レポートの例に合わせて、構成の見出しを上の説明と変えてある
- 上の囲みの中をコピーして文書にペースト
- それぞれの最上位の見出し行(1. 実習場所と実施日、 2. 観察植物リスト など)をダブルクリックして選択し、「スタイル」から「見出し1」設定(文字の大きさが自動的に変わる)
- 下位の見出し(・リストの作成方法 など)は、「スタイル」から「見出し2」に設定
- 書式は「書式のコピー・ペースト」で簡単に行える
- 慣れてきたら、よく使う書式は「スタイル」に登録しておくと便利
- ページの下の方に頁番号をつける
- メニューバーの「挿入/ページ番号」をクリックする。その際、表紙には頁番号を入れたくないので、「最初のページに頁番号を挿入する」チェックボクスをオフにする
- 2ページ目の下に「2」という数字が表示されている。これをダブルクリックするとフッター(ページ下部に共通して表示させる文字)が編集できる。「頁番号の書式指定」を選んで、「開始番号」を0にする
- 頁番号の文字を選択し、「Times New Roman 10 ポイント」にする
- 終わったら「閉じる」
- 表の作成
- 「表の作成」アイコンをクリックして、目的とする表の行数・列数をマウスのドラッグで指定する。
- エクセルで表を作っておき、コピー・ペーストするのも簡単
- 表の罫線の書式は「罫線」のアイコンをクリックして行う。
- 図の作成
- 描画ツールバーを表示させる。「メニューバー/表示/ツールバー/図形描画」
- いろんな図を利用できる → Power Pointの作業と共通する部分が多いので、そちらで解説。
Wordを使った文書作成に習熟する †
Wordはさまざまな機能を持っている。上ではレポート作成に必要なごく一部の機能だけを紹介したが、さらに、卒業論文の作成などで便利な機能もいくつか紹介しておこう。
テンプレートを用いたレポート作成 †
レポート等の文書を作成する場合、読みやすさを求めるには、フォントの種類や大きさを変えたり、行間を整えたり、いろんな手間が必要になる。しかし、こういった作業を何度も繰り返してやるのは面倒。そこで、自分専用テンプレート(ひな形)を1つ作っておく。そうすれば、今後のレポート作成のときには、ひな形に合わせて内容を書き換えるだけで、見栄えのいいレポートができることになる。
右のリンクから、レポート作成のためのテンプレートをダウンロードしてみよう。これは、レポート提出用のPukiwikiページのトップページに添付されているので、ダウンロードにはアカウントとパスワードの入力が必要だ。
このファイルを開くと、レポートで使われる様々な書式設定の見本と解説が載っているのが分かる。説明を読みながら、自分用に内容を変更すれば、自分だけのためのレポート用のテンプレートが作成できることになる。
授業では全てを解説している時間は無いので、いくつかの項目を抜き出して解説する。残りは自分で読んで、いろいろと変更して、機能を体験して欲しい。
スタイルの変更: †
Wordの文書では、要素ごとにスタイルが設定することができる。この場合、基本のスタイルを変更すれば、そのスタイルが適用されている部分の書式を一度に変更できる。
- ホームタブを開くとスタイルの一覧が表示される
- たとえば、「緒論」や「材料と方法」などの見出しには「見出し1」のスタイルが適用されている。
この見出し1の文字の色を黒からオレンジに変更してみる
- ホームタブで「見出し1」を右クリック。表示されるメニューから「変更」を選択
- 書式の変更で、「フォントの色」をオレンジに変更→見出し1が適用されている部分の文字の色が全てオレンジになった
さらに、他の見出し(見出し2, 見出し3等)の色も黒に変わった。
これは、見出し2などで基準にするスタイルとして「見出し1」がつかわれていたため。見出し2の色だけを変えたかったら、上と同様にして個別に変更。
目次の挿入 †
作成する文書が長くなってくると、目次をつける必要ある。目次は、見出しのところに「見出し」スタイルが適用されていると、自動的に作成することができる。
- 文章中の見出しに、見出しスタイル(「見出し1」、「見出し2」など)のスタイルを当てはめる。
- 文字列を右クリックして、コンテキストメニューからスタイルを選び、見出しを選ぶ
- フッターを挿入し、ページ番号を表示させておく。
- 目次を挿入したい場所にカーソルを移動し、「参考資料」タブから「目次」を挿入
Word以前の問題: レポートにはメッセージが不可欠 †
Wordを使えるようになったからといって、良いレポートが書けるわけではない
伝えたいメッセージ(主張)が無ければ、良いレポートなんて書けやしない
下の本は、レポートを書くということについて、具体的に分かりやすくまとめられている。
戸田山 和久. 論文の教室—レポートから卒論まで. 297ページ. 出版社: 日本放送出版協会 (2002/11)
(あと、今日Google検索をして見つけたんですが、テクニカルライター・冨永敦子さんの「プロから学ぶ「分かりやすい文章の書き方」講座」も参考になりそうです。)
メッセージを文章で表現することの大切さ †
正規表現熟語集:後方参照に慣れる †
前回初めて触れた正規表現の後方参照。分からなかったという意見もけっこう多かった。そこで、もうすこし練習して、使い方に慣れてみよう。まずは、前回できなかった演習問題から。
練習:日付データの形式変更 †
下に友達の誕生日リストが月、日、年の順で書かれている。
April 29, 1984
March 20, 1987
September 23, 1980
December 23, 1982
February 11, 1984
January 1, 1999
May 3, 1988
May 4, 1993
May 5, 1987
November 23, 1985
November 3, 1994
- このリストを正規表現検索置換を使って、
- 年・月・日の順(例:1984 April 29)に並び替えなさい
- 日、月、年の順(例:29 April, 1984)に並び替えなさい
解説 †
- まず、この課題では、月、日、年のそれぞれをどうやって正規表現で表すかを考える。
April 29, 1984
を見ると
月: 行頭から始まって、半角英文字だけがいくつか連続した文字列
日: 空白の次にくる半角数字の連続で次にカンマがくるような文字列
年: 空白の次にくる半角数字の連続で最後が行末
それぞれを正規表現で表すと、
月: ^[A-Za-z]+
日: [0-9]+, (注:正規表現前に空白が1つある)
年: [0-9]+$ (注:正規表現前に空白が1つある)
そうすると、これらを左からならべた
^[A-Za-z]+ [0-9]+, [0-9]+$
が
April 29, 1984
にマッチするはずだ。
- 次に、後方参照を考える
後方参照というのは、()で正規表現を囲むことにより、
その正規表現にマッチした文字列を、置換語として再利用できるものだった
まず、上のそれぞれのパーツの正規表現を、カンマや空白の部分を除いて()で囲ってみると、
^([A-Za-z]+) ([0-9]+), ([0-9]+)$
になる(ここは、()で囲むだけだから単純なことだ。この()で囲んだそれぞれの正規表現がマッチした文字列を、左から順番に
¥1 ¥2 ¥3
という記号で、置換文字列に呼び出すことができる。つまり、1行目ではそれぞれ、次のように対応している。
¥1 → April
¥2 → 29
¥3 → 1984
そのため、もし、置換文字列に
¥3 ¥2 ¥1
と書いたばあい、これは1行目では、
1984 29 April
を表すし、2行目では、
1987 20 March 20
を表すことになる。
- 解答例
検索文字列:([A-Za-z]+) ([0-9]+), ([0-9]+)
置換文字列:¥3 ¥2 ¥1
あるいは
検索文字列:^([^ ]+) ([^ ]+), ([^ ]+)$
置換文字列:¥3 ¥2 ¥1
- 補足:2番目の例では、([^ ]+)(意味:空白以外の1回以上の連続)が改行を含んでしまってるため、最後に1行の終わりを示す$をつけないと、うまく行かない。
前回の発展課題の解説 †
前回の発展課題は、上のような文字列の並び替えを、正規表現を使って行うものだった。3人のうち2人が正解だった。
なお、正規表現の例をもっと知りたければ、昨年度の学生の要望で作った、授業/H20/情報処理/正規表現熟語帳を参照してみよう。
やりたいこと | 検索文字列 | 対象文字列の例 | 置換文字列 | 置換された結果例 | コメント |
1行に含まれる全ての文字列を置換 | ^.*$ | abcdefg hijklmn 12345 opqrstu vwzya 98765 | Replaced! | Replaced! Replaced! | |
連続する半角スペースをタブに置換 | [ ]+ | abc def hij k | ¥t | abc<tab>def<tab>hij<tab>k | |
AまたはKをZに置換 | [AK] | BACK BaKery KABA | Z | BZCZ BaZery ZZBZ | |
AまたはKとそれに続く任意の1文字をZに | [AK]. | BACK BaKery KABA | Z | BZZBaZry ZBA | |
スペース以外の文字列の連続をtangoに置き換え | [^ ]+ | I am a boy. You are a girl. | tango | tango tango tango tango tango tango tango tango | |
1行を行頭からスペースで4つのパートに区切り、順序を逆に並べ替え | ^([^ ]+) ([^ ]+) ([^ ]+) (.*)$ | 12 34 56 78 90 Que sera, sera. Whatever will be. | ¥4 ¥3 ¥2 ¥1 | 78 90 56 34 12 Whatever will be. sera. sera, Que | |
表にあげた以外の正規表現で同じ操作を行うこともできる
第7回授業の課題 †
課題1.意見調査 †
http://bean.bio.chiba-u.jp/moodle から提出
課題2:ワードによる自己紹介の作成と提出 †
例(自己紹介.pdfに従って自己紹介をワードで作成し、
学籍番号.doc
というファイル名で保存して、メールの添付書類として に送信しなさい。なお、メールの件名は
情報処理07(学籍番号)
とすること。自己紹介の作成にあたっては、PDF中に書かれた説明に従ってください。評価は、
指示に従ってレイアウトできているかどうか
写真の貼り付けと説明の追加ができているかどうか
ワードの機能を利用して、いかに見やすく作成してあるか
などに基づいて行われます。
課題3:班ごとのプロジェクトの相談と企画書の提出 (提出は各班のリーダーのみ) †
7月14日の授業では、班ごとにプロジェクトの成果をPowerPointで発表してもらいます。
- 班ごとに行ってきたプロジェクトの成果を、Power Pointを用いて発表。発表時間9分、質疑応答1分を目安(予定)。
- 全員で評価し最優秀賞を決定 【何か賞品があるかも!】
- 班ごとに、次の項目を相談して、プロジェクトの企画書をMSWordで作成し、6月15日(水)正午までに、梶田まで、メールの添付書類で提出してください。
- 企画書に含む項目:
- プロジェクトタイトル:
- メンバーの氏名
- プロジェクトの概要(100文字以上)
- プロジェクトの魅力(100文字以上)
- メールの件名は「プロジェクト企画書」にしてください。
- 評価の基準:
プロジェクトの魅力が読み手に伝わるかどうか。タイトル、見出し、内容はそれぞれ読み手に分かりやすいよう、書式(文字の大きさ、書体など)に配慮してください。