西表島の世界自然遺産推薦について
平成29年2月に、西表島は世界自然遺産の候補値としてユネスコに推薦されましたが、平成30年5月にはIUCNの勧告を受けて、推薦を取り下げることになりました。その後、自然遺産の価値を示す記載基準を2つから1つに変更するなどの様々な検討を経て、平成31年2月に、再度、推薦がなされました。
自然遺産への推薦については、なかなか一般の方には十分に知らされていなかったり、理解が難しい内容もありますので、このページで、できる限り中立な立場で、地元住民の方にも分かりやすく情報を提供しようと思います。<文責:梶田>1. 西表島を世界自然遺産に推薦するって誰が決めたの?
よく聞く質問: 「西表の自然遺産登録って、誰がやろうって言い出したんだろう。周りの地元の人は誰も誘致活動をしているようには見えないのに、いつのまにか進んでいるし。。。」
答え: 国(日本政府)です。 世界文化遺産と違い、世界自然遺産の推薦については、ほぼ100%、
国のトップダウン事業です。国が、日本の中でどの地域を自然遺産に推薦できるかを検討し、スケジュールを決めて、屋久島、白神、知床、小笠原と推薦し、登録されてきました。西表島を含む4島は、国が日本の中で自然遺産として推薦できる候補と考えた最後の地域です。候補の選定は科学的な自然の価値の評価から始まったもので、
候補地の選定時には地元住民の意見は反映されていません。
2. 西表島の世界遺産登録は、この後どう決まるの?
よく聞く質問:「西表島は世界遺産に推薦されたってよく聞くし、黄色いのぼりがところどころに立っているけれど、この後どうやって決まるの?」 答え: 2019年2月にユネスコに推薦書が提出されました。この後、ユネスコの諮問機関であるIUCNによる現地視察や審議を経て、2020年夏頃のユネスコ世界遺産ミーティングで、結果(登録、延期、却下のいずれか)が報告されます。 2017年10月に行われたのと同様に、IUCNの委員2名による現地視察が行われる予定です。その後、現地視察員によるレポートと、日本政府や、各種団体等から提出された文書や意見が、IUCN世界遺産パネル(構成員12名)で審議され、疑問点については改めて、日本政府に追加文書の提出が求められます。これらをさらにパネル内で審議してユネスコに報告書が提出されます。2020年夏に開かれるユネスコ世界遺産ミーティングではこの報告書が審議され、結果が報告されます。
3. 西表島の世界遺産登録について意見を述べたいんだけど、どうすればいいの?
よく聞く質問:「私は西表島の自然遺産登録には正直不安があるので、審査機関に意見を直接聞いて貰いたいんだけれど、どうすればいいんでしょうか?」 答え: IUCNの委員に意見を直接提出できます。 2019年10月11-12日に実施されるIUCNによる現地視察では、地元団体の代表との交流会が開催される見込みです。この交流会には、地元団体の代表者が、IUCN委員に直接意見を述べることができます。2017年10月に行われた交流会では、時間の半分以上を参加団体の紹介に費やしていたので、次回の交流会では、質疑の時間を十分に確保するようにして頂きたいものです。また、現地視察の後は、12月頃にUCN世界遺産パネルの会議が開かれる見込みです。前回と同様に、視察レポートに加え、政府からの追加提出文書や、NGO, NPO, その他の団体や地元住民からの追加情報も含めて審議されると思われます。
さて、意見の提出先や提出方法については、上のお知らせに記入しましたように、
電子媒体の場合: ÅBERG Ulrika <Ulrika.Aberg@iucn.org> にメールで送付。
※ 可能な限りすぐに送付してほしい。できれば10月12日までに。
郵送の場合の送り先は、
IUCN World Heritage Programme
c/o Ulrika Åberg
28 Rue Mauverney
CH-1196 Gland
Switzerland
となっています。なお、西表の地元住民や団体の方で、意見は提出したいが提出の仕方が分からないという方は、西表研究施設・梶田までご相談下さい。
4. 西表島が世界自然遺産に登録されたら、どうなるの?
よく聞く質問:「もし西表島が世界遺産になったら、観光客や観光業者が増えるんじゃないかと思うんだけど、住民生活や自然の保護のあり方が変わるんじゃないかと、不安です。」 答え: 観光客は急増することが予想されます。それに対応する観光業者も増えるでしょう。急激な観光客の増加によって、自然環境の劣化が急速に進む可能性があります。特に、ゴミや汚水の増加や、車の増加、保護地域への立ち入りの増加は重大な影響を及ぼすでしょう。住民の生活も、様々な変化にさらされる可能性があります。これらの変化に十分に対応できるかどうか、今後の注意深い対応が必要です。2017年の8月には、竹富町が主催する住民説明会があり、そこに参加した方からは自然遺産登録について様々な不安が寄せられました。現在、竹富町のホームページで、住民から寄せられた意見と、竹富町担当者からの説明が公開されています。
この説明会では、エコツーリズム推進法を使った入域制限や、ガイドの登録性を検討していることについて説明がありました。また、2017年10月に開かれたIUCN委員との意見交換会では、これらの法律による規制の実施が2019年以降になることが説明されました。つまり、もしも2018年に西表島の世界遺産登録が決まると、西表島は2019年以降の規制実施までは、この法律による規制無しに、観光客や観光業者の増加に対応することになるという問題があります。行政が今後、どれだけ迅速に、また、どのような形で、この問題に対応するのか注視したいと思います。
ただ、これらの対応は、説明会の中で竹富町の通事課長が説明しているように、基本的には世界遺産への登録の有無に関わらず、行われるべきものです。竹富町による統計をみると、西表島への観光客の入域数は増加傾向にありますので、世界遺産への推薦を契機に、西表島の自然や住民生活を守る仕組みが整備されることを期待しています。 2017年の8月には、竹富町が主催する住民説明会があり、そこに参加した方からは自然遺産登録について様々な不安が寄せられました。現在、竹富町のホームページで、住民から寄せられた意見と、竹富町担当者からの説明が公開されています。
この説明会では、エコツーリズム推進法を使った入域制限や、ガイドの登録性を検討していることについて説明がありました。また、2017年10月に開かれたIUCN委員との意見交換会では、これらの法律による規制の実施が2019年以降になることが説明されました。つまり、もしも2018年に西表島の世界遺産登録が決まると、西表島は2019年以降の規制実施までは、この法律による規制無しに、観光客や観光業者の増加に対応することになるという問題があります。行政が今後、どれだけ迅速に、また、どのような形で、この問題に対応するのか注視したいと思います。
ただ、これらの対応は、説明会の中で竹富町の通事課長が説明しているように、基本的には世界遺産への登録の有無に関わらず、行われるべきものです。竹富町による統計をみると、西表島への観光客の入域数は増加傾向にありますので、世界遺産への推薦を契機に、西表島の自然や住民生活を守る仕組みが整備されることを期待しています。